第152話 再会、そして

「着いたわ。ここが、私達が住んでいる宿舎よ」


 ウォルの案内によって辿り着いたその宿舎は、外観は木で出来たログハウスのような造りになっている建物だった。


「ただいま、ヴァーノ」


「おぉ」


「お久しぶりです、ヴァーノさん。三日振りですね」


「……ソール達か。よくここまで来たな」


 飽くまでもヴァーノは普段の落ち着いた雰囲気を崩さなかった。しかし、


「ヴァーノ、素直じゃない。本当は凄く嬉しい」


「なっ、余計な事を言うなウォルっ!」


 ヴァーノは少し顔を赤らめながら言った。それだけで、内心は嬉しがっているだろうという事は、ソール達に伝わったようだった。


「コホン。……それで、オマエ達はこの三日間どうしてたんだ?」


 ソールは、宿屋に泊まることになった経緯や、その後の行動について、ヴァーノとウォルに伝えた。


「……なるほど。つまり、『教会』がオマエ達をまだ捉えられていないという事については分かっている、という訳か」


「はい。でも、それ以外の事が全く分からないので困っていたんです」


「そう言うことなら安心しろ。『教会』の動向については、ある程度把握しているつもりだ。この街から抜け出すこともそれほど難しい事ではないだろうよ」


「……」


「不満そうだな、ソール」


 何処か浮かない表情のソールを見て、ヴァーノが口を出した。


「……このまま、この時計の事を何も知らないまま帰ると言うのは、ちょっと納得がいかないというか。それに……」


 と、ソールは拳をぎゅっと強く握り締め、


「それに、僕聞いたんです。この街の魔導士から。あの大司教がやって来たことの数々を。イーユの町で出会った魔導士キースを唆したのもあの人で、ジーフの街で僕らを襲った魔導士を送り込んだのもあの人だった。それだけじゃない。シズミの町で起きたルーン密売の犯人であるイオナを陰で操っていたのも、あの大司教だったんです。そんな人を、このまま放ってはおけません。僕らの手で、決着を付けないと気が済まない!」


「ではどうする?」


ヴァーノが鋭い視線をソールに投げかける。


「……カール大司教を、止めます」


「どうやって?この街には無数の魔導士達が居る。カールの下まで辿り着くのも困難だろう。それにもし、辿り着けたとして、勝算はどれくらいある?カールは、『教会』でも数少ない『光の魔導』の使い手だ。その機動力はイオナさんの雷撃をも凌ぐ程とされている、対人に特化した魔導だ。そんな相手に、素人同然のオマエが戦って勝つなんて出来るのか?」


「……」


 ヴァーノの言い分に、ソールは閉口した。しかし、


「……でも、それでも僕は、戦います」


「意思は固いのか?」


 その問いに、ソールはコクリと頷いた。


「……良いだろう。付き合ってやる」


「え?」


「ヴァーノ?」


「俺もあの人のやり方にはうんざりしてたんだ。どうせ俺達も今後の自由は保障されないだろう。だったら、一矢報いてやりたい。そうだろう、ウォル?」


「ヴァーノ……。うん、そうだね。私も、やる」


「決まりだな」


「協力してくれるんですか?そんな事したら、ヴァーノさん達の身にも危険が……!」


「今更何を言ってんだよ。そんな事は気にするな。俺達がやりたいからやるんだ。文句あるのか?」


「ヴァーノさん……。ありがとう、ございます」


 ソールは深々とヴァーノとウォルに向かって一礼した。

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