第150話 三人が進む道
ソール達は、宿屋を出た後、カシオズの街の裏路地を歩いていた。
「ねぇ、ソール。これからどうするの?」
水を撃ったような静寂が続く中、コハルが不安そうに切り出した。
「……取り敢えず、ヴァーノさん達の意思が分からないけれど、約束したあの場所に行こうと思う」
遡ること、数日前。
まだ一行がカシオズの街に着いて間もない頃。
「一応、念のため待ち合わせの場所を決めておこう」
それはヴァーノからの唐突の提案だった。
「待ち合わせって、何のですか?」
ソールが当然の疑問を発した。
「念には念を入れておく。この街で、俺達が一緒に行動するよりも、分かれて行動する可能性の方が高いからな。何が起きてもいいように、緊急の事態が起きた時にための待ち合わせ場所を決めるのさ」
「緊急の事態……そんな事が起こるんですか?」
「飽くまでも可能性の一つとしての話だ。だが、用心するに越したことは無いだろうよ」
「……そうですよね。分かりました。それで、その待ち合わせ場所と言うのは?」
「あぁ、ここだ」
そう言いながら、ヴァーノは全員の前で地図を取り出した。そして、そのとある一ヶ所にペンで丸を描く。
「『カシオズ中央公園』。その噴水の前だ」
「公園の噴水の前……。分かりました」
ソールは地図上の目的地の場所を記憶すると、コクリと頷いた。
「そっか、じゃあそこの公園に行けばいいのね?」
コハルがソールに確認をする。
「うん。ヴァーノさん達と約束したことだし、そこに行けば何かしらの突破口が見えるかもしれないと思ってね」
「そっか」
「……でも、そこに行って本当に大丈夫なの?」
ルナが歩く足を止めて呟くように言った。
「ルナ?」
「だって、ヴァーノ達がどうなっているのかも分からないし、もしかしたら、向こう側に付いている可能性だってある訳でしょ?そんな状況で、わざわざ出向く必要ってあるの?」
「……それは僕も考えたさ。でも、いや、だからこそ、そこに行くんだよ」
ソールはルナの顔を正面から見据える。
「今の僕らには行く当てがない。その上、魔導士の追跡だってある。本当なら、こんな危険な賭けに出るような事なんて、得策ではないのかもしれない」
「だったら」
「それでも!ヴァーノさんが言った事を信じて、そこに行ってみるのもいいんじゃないかって思うんだ。ヴァーノさんが敵になるような事があるのなら、わざわざ僕らに待ち合わせの場所なんて示し合わせないと思うんだ」
「ヴァーノを信じろって言いたいの?」
「うん、そうだよ。少なくとも、僕はあの人を信じてる」
少女は少し考えたが、真っ直ぐな少年の瞳を見ると、
「……分かった。ソールに付いて行くよ」
「ありがとう、ルナ」
二人は分かり合うと、手を取り合い、再び歩き始めた。
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