第140話 隔絶された三人
大司教との顔合わせの後、ソール、ルナ、コハルの三人は、魔導士に連れられて別室へとやって来た。
「ほら、着きましたよ。ここです」
連れて来られたのは、木造の家の一室だった。
「今日はここで泊まってくださいね」
その一言だけ残し、魔導士は立ち去ってしまった。
残されたのは、ソール達三人だけだった。
「全く、何なのよ。あの大司教とか言う奴。気に食わないわ」
ルナは三人になって早々に、そんな文句を言い始めた。
「まぁまぁ、そんな事言わずに」
ソールはそんなルナを宥めようとしていたが、
「そう言うアンタは良いの?あんな奴の言いなりにばっかりなって!」
「……良い訳ない」
ルナとコハルにそのような事を言われ、
「うん、そうだね」
と、ソールはコハルのぬいぐるみの中から何かを取り出した。
「だからこそ、これからの僕達の動き次第で未来が変わる、ってことさ」
それは、奪われたはずの懐中時計だった。
時は、列車内まで遡る。
『一体何なんですか、それ?』
『これはな……こういうモンだ』
そう言って、ヴァーノは紙の包みを外した。そこから出てきたのは、
『懐中時計、ですか?』
『あぁ、そうだ』
ヴァーノは懐中時計を高く掲げると、
『この先、何があるか分からんからな。用心するに越したことは無い。念のためだ』
と、ソールの前へと出し、
『コイツはオマエが持っていろ。何かあったらいつもの時計じゃなく、こっちを出すようにしろ』
『えっ、どうして、ですか?』
『はぁ』
ヴァーノは溜息を吐きながら、
『お前はお人好し過ぎるんだよ。何かあるごとに真っ直ぐに解決しようとする。だがこれから先は、魔導士の本拠地、カシオズだ。この中の誰かが人質に取られ、魔導士から時計を迫られる可能性だってある。そんな時、お前は真っ正直に時計を渡すことになるだろう。そんな時にこれを使うんだ』
『なるほど……』
ソールは関心しながら、自分のもう一つの懐中時計を手に取る。
『それじゃ、この時計はどうすれば……?』
『さぁな。コハルのぬいぐるみにでも預けたらどうだ?どうせ、オマエ達は一緒に活動してるだろうし』
「でもまさか、あのヴァーノさんの言ってた事が本当になるとは思わなかったけどね」
ソールは感心しながら思い出す。
「それで、これからどうするの?当然、このままこんな所に閉じ込められてる訳じゃないわよね?」
ルナが片目を瞑りながら、訊いた。
「もちろん。でも、動くのは夜遅くになってから、だね」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます