第8章:王都カシオズ
第137話 王都カシオズへ
蒸気機関車が、停車の汽笛を上げた。
ゆっくりと、機関車の速度が下がっていき、ついに停車をした。停車すると、駅員が一斉に駅のホーム側のドアをゆっくりと開ける。
「着いたーーーーーーーーーー!」
開いたドアから、コハルが勢いよく飛び出して来た。
「コラ、コハルちゃん、駅の中は走っちゃダメだよ」
すかさずルナがコハルを注意する。
「はーい、ごめんなさい」
コハルが振り返って、ルナに謝った。
「まぁまぁ、気持ちは分からなくもないしね」
ソールが怒るルナを宥めようとする。
「でも、危ないものは危ないでしょう?」
「それはそうだけど……」
「……ま、その気持ちは確かに分かるわね。だって、こんなに大きな街に来たんだから」
「そうか、オマエ達はカシオズの街は初めてか」
ヴァーノが会話に入った。
「えぇ。ジーフの街も大きいけれど、この街に比べたら小さいもの」
「当然だ。カシオズはこの国の王都、言わば、この国最大の都市だからな」
その言葉を聞いて、ソールは再び辺りを見回す。
(ここが、僕の旅の最終目的の地、カシオズ……)
そして、少年は上を見上げる。
(あの人が手紙で言っていた、カシオズの街に隠された『真実』って、何なんだろう?)
頭上には、暗くどんよりとした曇り空が広がっていた。
駅を出てから、ソール達は何処に行こうか悩んでいた。
「さて、これからの行動をどうするか、だが……」
ヴァーノは煙草に火を付けて口に咥えていた。
「ねぇ、ここから『教会』って近いの?」
ルナが尋ねる。
「まぁ、それほど遠くは無いが、近くも無い……微妙なところだな。だが、すぐにここから着ける場所ではない。だから、ある種ここは一先ず安全な地帯と言っていい。……と思いたいが」
ヴァーノは辺りを見回す。
「何やら、駅から視線を感じるな」
その言葉に、ルナとソールが周りに対して警戒をする。すると、ソール達の少し後方で、物陰に隠れる人影をソールは目撃した。
「あれ、か」
「ちょっと、どうするの!?これって結構マズイんじゃないの!?」
小声ながら、ルナは慌てる様子を示した。
「落ち着いて皆。向こうも別に危害を加えるつもりは無いみたい。もしそうなら、とっくに私達は襲われているだろうし」
と、ウォルは冷静に状況を俯瞰する。
「だな。奴の目的が何かは知らんが、一旦ここは撒いておくか」
ヴァーノは一行の先頭に立つと、後ろの追っ手との距離を確認しながら走る。
「そこの角を曲がるぞ」
ヴァーノの指示に従い、ソール達はカシオズの街を右へ左へと曲がっていく。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます