第132話 雷撃戦3

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」


 ソールは叫びながら、猛進する。まるで自分自身を鼓舞するかのように。


「……っ、ソール、来るなっ!」


 ヴァーノが叫ぶが、気付いた時にはもう遅い。少年は覚悟を決めて、走っていた。


「はああああああああああっ」


 少年が、真正面に手を翳す。すると、少年の腰に提げた懐中時計が光りだした。そして、次の瞬間、少年の掌から魔導陣が浮かび上がり、そこから風の渦が現出した。


 それは一直線に、イオナの元へと襲いかかる。


「何っ!?」


 イオナは驚きを見せたが、竜巻をすんでのところで躱した。


「あの少年、もう時計を使いこなしているのか」


「驚くのはまだ早い!」


 と、ソールは拳を突き出した。そこから再び魔導陣が現れ、今度は大量の水が溢れ出した。


「くっ……うおおおおおおおお!?」


 イオナは反応し切れず、水に押し流されて行った。


「これは、ウォルさんの分だ……!」


 ソールはぐっと拳を握り締める。


「……やるじゃないか、少年」


 ずぶ濡れになりながらも、イオナは立ち上がる。


「俺達魔導士を相手に臆する事無く突っ込んで来たのは褒めてやる。だが、これ以上のオイタは、流石に俺でも手加減しないぞ」


「それでいいですよ。寧ろ、そうしてくれた方が後腐れが無くていい」


「……いい覚悟だ」


 イオナは両の手を勢いよく合わせた。直後、無数の魔導陣がソールの立つ周辺の地面へと描かれる。


「……!」


 それにいち早く気づいたソールは、握った拳を、自身の身体を回転させて振り回した。


 それと同時に、ソールの懐中時計が光り出す。刹那、ソールの周りに現れた魔導陣は粉々に砕け散った。


「なっ!?」


(何なんだあれは……?魔導を打ち破るなら兎も角、魔導陣を破壊するなんて聞いた事がないぞ!?)


「はああああああああああああ」


 ソールは叫び、それに合わせて手を翳す。次にその手に生み出されたのは、土の礫を生み出す魔導陣だった。


 複数の土の礫は、立ち尽くすイオナに向かって飛んで行く。


「くっ、させん」


 イオナはイオナで手を伸ばし、その先から魔導陣を出現させた。そして、そこから生み出された雷で、土礫を次々と撃ち落としていった。


「おおおおおおおおおおおお」


 と、イオナは唸り声を上げながら、手を差し伸ばす。その直後、ソールの足元に魔導陣が浮かび上がった。そして、雷撃がソールを襲おうとする。


「くっ!」


 ソールはそれを横に飛んでやり過ごした。


「そこだぁ!」


 そこに、イオナがソールの懐へと飛び込み、魔導陣を出した手をソールへと向ける。そこから、一閃の雷撃が繰り出された。

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