第131話 雷撃戦2

 少年は、葛藤していた。


「これが、魔導士同士の勝負……」


 目まぐるしく変わる戦況に、ソールは焦燥を覚えた。


(ヴァーノさんとウォルさん、二人の力になりたい。けれど、こんなに早々と変わる状況、相手の力を見てしまうと、どうしても足がすくんでしまう……。一体どうすれば……)


 そう考えている時だった。


「ぐっ……!」


 ウォルがソールの居る後方まで飛ばされて来たのだ。


「ウォルさん!?」


 ソールがウォルのもとへと駆け寄る。


「大丈夫ですか、しっかりしてください!」


「う、うぅ」


(かなりの攻撃を受けたみたいだ。立ち上がるのは難しい、か)


「……」


 ソールは、改めて戦況を俯瞰する。






 ウォルが戦線離脱してからも、ヴァーノはイオナを標的と捉え、炎による攻撃を繰り返している。


「はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


「でやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


 対し、イオナは魔導陣を自身の周囲からヴァーノの周囲まで出現させ、幅広い攻撃角度でヴァーノを少しずつ少しずつ追い詰めていく。


「くそっ!」


「はははっ、ウォル同様にお前もいい加減倒れたらどうだ?」


「ふざけるなっ!誰が倒れるものかっ」


 ヴァーノはイオナに向けて手を翳す。すると、イオナの足元に大きな魔導陣が描かれた。


「うおっと」


 イオナは横に飛んだ。すると、先程までイオナが居た所から火柱が高く燃え上がった。


「おー怖い怖い。本気で狙って来てるじゃないか」


「当たり前だ。イオナさん、こっちは最初から真剣なんだよ」


「そうかい。なら、こっちももっと激しく行くかぁ!」


 イオナは空へと手を翳す。すると、空中に無数の魔導陣が浮かび上がった。


「なっ!?」


 ヴァーノは反応しきれなかった。次の瞬間、無数の魔導陣から雷撃が炸裂し、ヴァーノの身体を貫いた。


「ぐあああああああああああああ!」


 ヴァーノの身体中に雷の衝撃が迸った。


 それを、ソールはただ見ている事しか出来なかった。


「ヴァーノさん!」


「……くっ!」


 少年の声に、失いかけた気力を取り戻し、ヴァーノは崩した体勢を立て直した。


「まだ……だ」


「ほう、見上げた心意気だな。だがそれも何時までもつかな?」






「……っ」


 ソールは歯噛みした。


「僕に出来ることは無いのか……!?」


 ソールは周囲を見回す。


 倒れているウォルが目に留まった。自分ではどうする事の出来ない無力さから、ウォルは傷つき、倒れた。その事実が、ソールの胸を強く突き刺す。


「……いや、出来るはずだ。僕にも」


(微睡みの森の事を思い出せ。……この時計は、この力は何の為の力だ)


 ソールはゴクリと唾を飲み込む。深く深呼吸する。


 そして何かを覚悟したかのように、両の眼をパッと強く見開いた。

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