第130話 雷撃戦1

「ウォル!大丈夫か!?」


「……大丈夫。でもちょっと効いたかも」


(……イオナさんは、『教会』でも数少ない『雷撃』の魔導の使い手)


 ヴァーノは攻撃を続けながら考える。


(その特徴は、素早さと自在さ。オレ達の炎と水のようなありきたりな魔導には無い機動力……)


 ウォルが、雷の衝撃に膝を付いた。


(そんな魔導の使い手に、オレ達に勝算は……?)


「考えている暇は無いぞ、ヴァーノ!」


 気が付くと、ヴァーノの身体の左右に幾何学模様が浮かんでいた。


「!?」


 咄嗟にヴァーノは後ろへ飛んで、イオナの攻撃を躱した。


「魔導陣に気が付かないとは、少し集中を欠いてんじゃないか?」


「くそっ!」


 ヴァーノは手を叩いた。すると、彼の両の手から炎が現出し、それは瞬く間に大きくなった。


「はあっ!」


 その炎は、まるで龍の如くうねり、イオナに向かっていく。


「ぐっ」


 イオナはその炎の片に焼かれながら、


「やるじゃないか。ならこっちも……!」


「イオナさん、アンタは『教会』のルーン研究に携わっていたはずだ。それなのにどうしてこんな事を……」


「だからこそさ。『教会』のやり方だけじゃ実験対象が足りない……だから子供たちを使って、色々と情報を得ていたって訳さ」


「そんな事、赦される道理があるとでもっ!?」


「思ってないさ。思ってないからこうしてお前らと相対してるんじゃないか」


 イオナは手を伸ばす。それだけで、ヴァーノの周りに幾つかの魔導陣が浮かび上がった。


 無数の雷撃が、ヴァーノへと降り注がれる直前、


「くっ、うおおおおおおおおおおおおおおおお!」


 ヴァーノは回転しながら炎をまき散らした。するとそれらは大きな渦となり、柱となった。


 イオナの雷撃は、その柱に降り注ぐもヴァーノの身までは焦がせなかった。


「ほう、本来の攻撃手段を防御と変えたか」


 イオナが関心の声を発する。その直後、


 轟、と彼の身体は大量の水で流されていった。


「関心、してる暇は無い」


 それはウォルが作り上げた、魔導による洪水だった。


 しかし、それも束の間、溢れんばかりの水から飛び出して来たのはイオナだった。


「分かっているじゃないか。少しは楽しめそうだ、なぁ!」


 イオナは自身の足へと魔導陣を浮かばせる。するとそれから生み出した小さな雷で、ウォルの生み出した水の水面を走り始めた。


「なっ!?」


「驚いている暇は無いぞ、ウォル!」


 ヴァーノのその言葉で思い出したウォルは、再び襲い掛かって来る敵に対して、手を翳す。

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