第128話 そして、少女に手を差し伸べる

「それで、その子は?」


 泣いているミーナを連れて宿へと戻ると、ヴァーノから何やらうんざりした様な目線で出迎えられ、ソールは少し頭を抱えたが、自分のすべき事を思い出し、強気な姿勢を取ることにした。


「彼女はミーナと言って、さっき帰って来る途中に見かけたので声を掛けました」


「そんな事を聞いているんじゃない。……全く、どうしてオマエは、そうやって厄介事をいつも持って帰って来るのやら」


 ヴァーノが頭を抱える仕草をした。


「で、その子が抱えてる問題ってのは何なんだ?」


「……そう言ってもらえると思ってました」






 そうしてソールとミーナは、事の経緯を全てヴァーノ達に話した。


「成程、つまりキミがこの町で起こっていたルーン取引の実行犯だったという訳か」


「……えぇ、そうよ」


「それで、キミはどうしたい?何を望んでいる?」


 そう言われたミーナは自身の気持ちを再確認するかのように、


「……こんな事、ダメだって分かってた。でも、言い出せなかった。自分を偽ってた。力が欲しかったから。……だけど、やっぱりこんなの間違ってる。自分達を傷つけて、自分自身以外の誰かも傷つけてる。そんなの、良い訳がない。……だから、止めたい。皆を助けたい!」


「そうか……」


 ヴァーノは暫し目を瞑ると、


「中々どうして真っ直ぐな心を持っているな」


「それじゃ……」


「あぁ。協力しようじゃないか」


「やったね、ミーナ!」


 その言葉を聞いた途端、ソールは飛び上がって喜んだ。


「まだ話は終わってないぞ、ソール」


 と、ヴァーノは喜び舞い上がるソールを諫めた。


「最後に、オレ達が戦う相手の名前を、教えて欲しい」


「……分かったわ。私が取引をしていた相手は―――」

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