第125話 路地裏の子どもたち

 シズミの町の裏路地に、子どもたちが集まっていた。


「あれ、ミーナは?」


「分かんない。また何処かでルーン集めかも」


 少年少女がそんな話をしている時だった。


「ごめんなさい、遅くなったわ」


 と、ミーナと呼ばれる少女が現れた。


「あ、ミーナ。お帰り」


「ただいま。って、……また、怪我人が出たの?」


 裏路地に集まる子どもの中に、包帯を手に巻き付ける少年が居た。


 よくみると、その少年以外にも腕や足を怪我している子どもが何人か居る。


「痛っ……!これくらい、平気だっての」


「ベル、あまり強がってもしょうがないでしょう」


ベルと呼ばれた少年は軽く舌打ちをすると、


「強がってなんかねぇよ。これくらい、かすり傷だ」


「……またルーンを使ったのね」


「……しょうがねぇだろ。向こうが吹っかけて来たんだ。自己防衛だよ自己防衛」


ベルはその瞳に光を湛えながら、


「俺たちにゃ、身を守る術がこれしかねぇからな。これくらいのリスクはしょうがねぇだろ」


「……」


ミーナはその言葉を聞いて、ある少年から言われた言葉を思い出す。






『キミが思っている以上に、ルーンはとても危険な代物なんだ。それに、素人が簡単に扱えるような物じゃない。何も知らない内に使っていると、危険な目に遭う可能性だってあるんだ』






「ここらで潮時かもね」


その言葉に、その場の子供たちが全員ミーナの方を向いた。


「なっ、それじゃ、俺達はこれからどうすりゃいいんだよ!?」


「そうだよ、僕らには力が必要なんだ」


「そうだよそうだよ」


上がる声は、どれも現状維持を渇望するものばかりだった。


「それは……」


ミーナは、言うべき事を見失ってしまった。

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