第123話 魔導士との接触
(何だ、この人達は……!?)
咄嗟にソールは身構えた。相手が誰であれ、人数的有利は相手にある。その状況に置いて一時の油断も許されないというのを、今まで培った経験が彼に警鐘を鳴らしていた。
(服装から察するに、恐らくはヴァーノさん達と同じ魔導士……。けれど……)
ソールは周りを観察する。そして、考えを巡らせる。
「キミ、ちょっといいかな?」
黒ローブの一人が声を発した。
「キミ、ソール君だろう。ちょっと話をしたいんだ」
「!?」
(僕の名前を知ってる……?)
ソールは男の言葉に眉をひそめた。
「そう警戒する事は無い。我々は魔導士イオナの話を聞き、キミの名を知ったんだ」
(イオナ……って、確かヴァーノさんやウォルさんの知り合いの魔導士、だっけ?だとすれば、本当に警戒する相手じゃないのかも)
「……お話とは何でしょうか?」
ソールは相手が自分に危害を加える可能性は低いと考え、警戒を徐々に解いていく。
「ありがとう。実は、我々は『教会』所属でね。キミが一緒に旅をしているヴァーノさんやウォルさん、そしてイオナさんと同じ魔導士なんだ。それで今はイオナさんとこの町に広まっている『とある問題』を解決すべく、この町に来たのさ」
「その問題というのが、知っているだろうか、『ルーン』の密売がされている、ということなのだよ」
「本来であればルーンという物は、魔導士が適正な状態で持ってこそ、効果を発揮する物なのだが……。今回横流しされているルーンは素人でも扱えるように簡易な物として調整された物のようだ。しかし……」
魔導士は言葉を濁らせた。
「……そんな物を、そう簡単に流通させてはならないのだよ。魔導は本来、表立って使われていい物では無いからだ」
「我々はそれをどうにかして止めたいと考えている。そのために、どうか我々に協力してくれないだろうか?」
そこまで聞いてソールは、
「……分かりました。具体的に、僕は何をすればいいですか?」
「協力感謝するよ。キミには情報を提供して貰いたいんだ」
そう言って魔導士は、懐から一枚の紙を取り出した。
「こういう特徴の少女を知らないだろうか?ルーンの密売に関わっているらしいのだ」
ソールはピクリと眉をひそめた。何故なら、突きつけられた紙に描かれていた特徴を持つ人物を、知っていたから。
「知っています。けれど、僕も詳しくは分からないんです。ただ、この子が沢山の木札を持っているのは、見ました」
「ふぅむ。状況から察するに、今回追っている人物に間違い無さそうだな。それで、今この子が何処にいるか、知らないかい?」
「……さっきまではここに居たんですが……。向こうの方に行ってしまって」
「そうか……ありがとう」
そう言うと、魔導士二人組は走り去って行った。
「……ミーナが、ルーン密売の犯人……」
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