第114話 螺旋のその先には
翌日、ソール達一行はラバンカの町の礼拝堂を訪ねることにした。
礼拝堂は塔のように高く聳え立ち、その先は天高くまで続いていた。
「さて、行くか」
ヴァーノが先陣を切って礼拝堂の扉を開けた。
しかし、そこには誰の姿も見えなかった。
「……空振り?」
ルナがボソッと呟く。
「いや」
ヴァーノは冷静に、礼拝堂の中を見回す。すると内壁に、階段のようなものがあしらわれているのが分かった。
「螺旋階段とは、よく作ったものだな」
ヴァーノ達は一斉に上を見上げる。すると、内壁の階段は天高く続いていた。
「……上るしかないだろう」
そうして、一行は階段をひたすら上へ上へと駆けあがって行った。
「着いたぞ、頂上だ」
「ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ……長かった……」
まるで山登りでもしていたかのように、ソール達は疲れが滲み出ていた。
「……おい、誰か居るぞ」
ヴァーノの言葉に反応し、ソールは顔を上げた。そこには、仮面を着けた男が一人、立っているのだった。
「……」
男は屋上の鉄柵に手を乗せ、ラバンカの町全体を俯瞰していた。
「アンタがこの町の賢者、いや魔導士か?」
ヴァーノの問い掛けに、男は反応した。
「……如何にも」
男はヴァーノの方へ身体を向けた。
「尤も、既に現役は引退したつもりだったがね」
「あんなルーンを使っておいてよく言うな」
「……」
ヴァーノの言及に、男は沈黙した。
「さて、今回の、いやこの町の仮面について、色々と教えてもらおうか」
「ちょっと待ってください、ヴァーノさん」
ソールが口を挟んだ。
「その前に……居るんでしょ、そこに」
ソールが目をやった、屋上の死角、そこから一人の少女が姿を現した。
「ソール君……」
「やっぱり、君だったんだね。協力者は」
それはセーレだった。
「どうして、私が関わってるって分かったんデスか?」
「……簡単な話さ。昨日、君はあの中央広場で『ルーン』を回収してた。それに僕がこの町で時計の事を話したのは君しかいなかったから、そう思ったんだ」
「なるほど、あの時気付かれてたんデスね……」
「セーレ……」
仮面の男が何か言いたげに少女の名を呼ぶ。
「ごめんなさいデス……お父さん」
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