第113話 仮面談議
その日の夜、ソール達は再び皆で話し合う為に、宿屋の部屋でヴァーノの帰宅を待っていた。
「ヴァーノさん、遅いね」
ソールが壁掛け時計を見ながら言った。
「僕らが襲われたんだ。ヴァーノさんの方でも何かあったのかも知れない。……ちょっと外の様子を」
と、ソールが立ち上がった時だった。ガチャリと、部屋のドアが開く音がした。
「悪い、遅くなったな」
ドアの開く音と共に、ヴァ―ノが部屋に入って来た。
「こんな時間まで出掛けて、何か収穫があったの?」
そう尋ねたのはウォルだった。
「まぁな。……そっちこそ、何かあったのか?」
ヴァーノはウォル達を取り囲む空気に、若干の違和感を感じ取っていた。
ウォルは昼間に起きたことを全て話した。
「なるほど、やはりそっちも襲撃を受けたという訳か」
「『も』ってことは、もしかしてヴァ―ノさんも?」
ソールが口をはさんだ。
「あぁ。それも、ちょうどオマエ達と同じ昼間にな。……もしかしたら、時間帯も同じだったのかもしれんな」
するとヴァーノはおもむろに懐から1枚の仮面を取り出した。
「……!ヴァーノさん、それ……!」
ソールやルナは過剰にそれに反応を示した。なぜなら、それは昼間にルナが着けていたそれと酷似した見た目をしているからだった。
「フッ、安心しろ。これは唯の仮面だ。もうルーンは解いてある」
と、ヴァーノは仮面を片手で振りながら言った。どうやら、ソールとルナがざわついている様子がどうにも面白いらしい。
「何だ、驚かさないで下さいよヴァーノさん」
「ほんっとに人が悪い」
ルナは若干の嫌悪を示しながらヴァーノを睨みつけた。
「まぁそんな顔するな。軽い冗談だ」
途端にヴァーノは神妙な面持ちになって、
「さっきのウォルの話通り、この仮面、いや町中にある仮面には『人心のルーン』の細工が施されていた。それに加えて、この町には少し興味深い話があってな」
そう言ってヴァーノが皆に聞かせたのは、ソールがセーレから聴いた仮面の逸話だった。
「オレの勘が正しいのなら、そいつはまだこの町で暮らしてる。賢者ぶって民衆の人心を面白おかしく弄りながら、のうのうと過ごしてる可能性が極めて高い。民衆が着ける町中の仮面に細工がしてあるのは、流石に手が込み入り過ぎているからな」
ヴァーノは続ける。
「明日、この町の礼拝堂に行ってみよう。魔導を扱うのなら、そうした所の方が都合がいいからな」
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