第112話 少女の仮面のその下は

「あ、ソール君」


 セーレはソールの方に気付いた途端、手を振って応えた。


「偶然デスね、こんな所で」


 セーレはソール達に走って近づいて来た。


「あぁ、そうだね」


「お二人で買い物デスか?」


「まぁ、そんなところかな」


(何だ……?何か分からないけれど、違和感を感じる……)


 ソールは目の前の少女に何かを感じながら、返した。


「そう言うセーレは何してたの?」


「あぁ、ちょっと探し物をしてたデスよ。でも無事に見つかったので、帰るところデス!」


「……そっか」


 ソールは自分でも分からぬ内に、自然と疑問を口に出していた。


「ちなみに、何を探してたの?」


「何でも無いデスよ、何の変哲もないものデス」


 それを少女は、まるで何かをはぐらかす様な物言いで、ソールの疑問には答えようとはしない。


「……そっか」


 少年はそれ以上の詮索をするのを止めた。本来であれば、まだ質問は出来ただろうが、それを少年の心が許さなかった。


(昨日と同じ、恐らく笑顔のセーレだ。仮面で表情は見えない。けれど、恐らくその下は……)


「じゃあソール君、さよならデス」


 言い終えると、セーレは走り去ってしまった。


「……ウォルさん、僕のこの感覚が正しいのなら、セーレは」


「多分ね」


 自分の中の悪い予感に、ソールは空を仰ぎ見た。空はどんよりと曇り渡っていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る