第109話 忍び寄った魔の手

 ソールは妙な胸騒ぎを感じ、宿屋へと戻って来た。


「二人とも大丈夫!?」


 部屋に入るや否や、ソールはルナとコハルの無事を案じた。ドアを開けると、そこには異様な光景が広がっていた。






 仮面を着けたルナがコハルに襲い掛かっていたのである。






「なっ!?」


 思わぬルナの行動に、ソールが声を漏らす。


「や、止めてよ、ルナ……」


 コハルが苦しそうに掠れた声を発する。


「何をしているんだ、ルナ!?」


 思わずそう叫ぶと、ルナはソールの方へと向いた。


「……っ」


「なっ……!?」


 ソールが反応する前に、ルナが少年の方に向かって走って行く。


「がっ……!」


 押し倒されたソールが声を漏らした。


 そんなソールの様子など構い無しに、ルナはソールの首元へと手をやった。


「そんな、ルナ……どうして」


 必死に抵抗するソールだが、ルナに馬乗りにされて身動きも出来ず、ただ首を絞められるのに対して必死で手で抵抗するのみだった。


「……」


「ルナ……僕が分からないの!?」


 少年の叫びも虚しく、少女の手に込められた力は徐々に強くなっていく。


(……もう、ダメかもしれない)


 少年が諦めかけた時だった。


「何をしているの!?」


 と、後から部屋に入って来たウォルが、ルナの後ろ首へと軽い一撃を加えた。


「……っ」


 バタリと、ルナはその場に倒れこむ。


「ソール君、大丈夫?」


「……よかっ、た」


 ウォルの声掛けに反応してかしまいか、ソールも意識を失っていった。

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