第108話 仮面の町の翳り

 翌日、ヴァーノは朝食を摂り終えるや否やソール達を残してラバンカの町についての情報を集めるべく、出掛けて行った。残されたソールとウォルは町の中心地にある出店を見に、ルナとコハルは宿屋で留守番を、それぞれ行動に移した。


 そうしてソールとウォルが二人してやって来たラバンカの中心街。


「やっぱり、あの祭りに似てるよな」


 ソールはラバンカの町に並んだ出店に、ジーフの街の星祭りのそれに何処か似たようなものを感じ取っていた。


「キミが居たジーフの街も、こんな感じで賑わっていたわね」


 と、ソールの呟きを聴いていたのか、ウォルもそんなことを言っていた。


「そうですね。尤も、僕の街の出店が多いのはお祭りの時くらいだったんですけどね」


 そんな会話をしている時だった。


 ピューーーーイ、と甲高い横笛の音が鳴り響いた。


「……?」


 ソール達がはてなと思っている中、ウォルが周囲の違和感に気付いた。


「……気を付けてソール君。何か、おかしい」


 ウォルの忠告をソールが聞いた時には、ソール達の周りに仮面を着けた集団がいつの間にか集まっていた。


「……!?貴方達は、何なんですか!?」


「……」


「……」


 ソールのそんな疑問の声が届いていないのか、仮面の集団は何も声を発することなく、ソール達を取り囲んで距離をじわじわと詰めていた。


「ウォルさん、これは……?」


「恐らく、魔導」


(やっぱりそうか。この感じ、ジーフの街で襲われたあの時と同じ感覚だ……!)


「と、けい……わた……せ」


 集団の数人は、意識が無いのかふらふらと身体を揺らしながらそんなことを呟いていた。


「どうやら、またアナタの時計目当てみたいね」


「どうします?」


「決まってるじゃない」


 ウォルは自らの手を真っ直ぐ前へと伸ばしながら、


「強行突破よ」


 そう言った直後、ウォルの三歩前辺りの場所から幾つもの水柱が現れた。


「……っ」


 仮面の集団はそれに怯んだのか、数歩後ろへ下がった。


「今よ、早くっ!」


 と、ウォルはソールの手を取って走り出した。隙によって生み出された人々の間を縫うようにしてすり抜けた。


「……っ」


 仮面の集団はそれに反応し、ウォル達の後を追おうとする。


「させないっ」


 ウォルはその行動パターンを読んでいたのか、懐から水のルーンを取り出して、仮面の集団目掛けて投げ込んだ。するとそのルーンのカードから、水の大きな幕が現れ、次第に水の壁となって現出し、仮面の集団の行く手を阻んだ。


「これで奴らは、追っては来れない」


「ありがとうございます!」


「……でも不可解。どうしてこんな昼間に襲って来たの?」


「分かりません、でも」


 ソール達の胸には、一抹の予感があった。


「僕らが襲われたってことは、皆も危ないっ!」

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