第107話 宵星の二人

「やっぱり、ここに居た」


 ルナが宿屋の側の広場に居たソールに声を掛ける。


「ここなら、星が綺麗に見えるって聞いたから」


 ルナは優しく微笑みながらソールに近づく。


「ソール、昔から星を見るのが好きだったでしょ?だから」


「……そっか」


 ソールの何処かバツが悪そうな態度は気にしながらも、ルナはソールの隣に座り込んだ。


「さっきのウォルとの話、もしかして聞いてた?」


 ルナはソールに探りを入れる。


「……」


「『沈黙は肯定と変わらない』、だよ。ソール」


「……ロイに言われるよな、これじゃ」


 ソールはフッと肩の力を抜いた。


「別に聞くつもりじゃなかったんだけどね」


「さっきの話、ソールはどう思う?」


 ソールは寝転がった。


「ウォルさんが話してくれた事……あれが全部本当の事だったとしたら、ヴァーノさんの気持ち、少し分かる気がするよ。でも……」


 合わせて、ルナも寝転がり、星空を見上げた。


「でも、ヴァーノさんが感じ取ったこの町の違和感って何なんだろう?」


「それは分からないけど、この町、不思議な感じではあるわね」


 と、ルナは何処からか仮面を一枚取り出してみせた。


「あれ、ルナ……その仮面は?」


「あぁ、これ?お店の人にすっごく勧められちゃって、つい買っちゃった。……どうかな?」


 ルナは仮面を自分の顔に当てた。その仮面はただ表情を隠すためだけの無機質なものではなく、民族的な装飾があしらわれた、土産用に作られたものだった。


「うん、よく似合っているよ」


 ソールは微笑みながら言った。


「えへへ、ありがとう」


 褒めたソールだったが、月明りに照らされたその面には、何処か不気味な何かを同時に感じ取っていたのだった。

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