第103話 山道を越えた先に
ソール達は、山の中を進んでいた。
「ねぇ、いつまでこの道を歩くの?」
ルナがヴァーノに尋ねる。その声は疲れからか少しばかり途切れた息が混じっていた。
「そう言うな、今日中にはこの山を越える必要がある。こんな所で野宿という訳にもいくまいよ」
かく言うヴァーノも、続く山道にうんざりしているようだった。
「コハル、もう疲れたよ……」
一生懸命付いてきていたコハルも、既に限界は近づいていた。
「ちょっとここらで、休憩しない?」
そんな様子を見たウォルが提案した。
「……分かった。無理をして倒れてもらっては元も子もない。ここらで一旦休憩するか」
一先ず、周りが木々で覆われており先が一向に見えない中、一行は休息を取ることにした。
「やっと休めるわね」
「コハル、もう歩けないかも……」
ルナもコハルも、足が相当疲れたのか、座り込んで脚を伸ばして休ませていた。
「……確か、この辺りのはずだったが」
その中でも、ヴァーノは地図で道筋を確認していた。
「何がですか?」
そんな様子のヴァーノに、ソールが尋ねた。
「いや、オレの記憶が正しければこの山を越えた先に町が一つあったはずなんだが……」
と、ヴァーノは指でその手に持っている地図をなぞっている。
「……あったぞ、ここだ」
その声に反応してソールも地図を覗き込む。
「……『ラバンカ』、ですか?」
「あぁ、次の目的地はここになるな。ちょうど山を抜けた先にある町だ。この規模の町なら、宿の一つや二つはあるだろうな」
そんな二人の会話を耳にしたウォルが、
「……ラバンカ?」
と、何処か心当たりのあるような反応を示した。
「知ってるんですか、ウォルさん?」
「えぇ、噂でちょっとね」
そう言ったウォルの顔は、何処か浮かない表情をしていた。
「あまりいい噂では無さそうだな」
ヴァーノは鋭い眼でウォルを見つめる。
「一応オレはこの中では一番の年上だ。目的地に設定した以上、相応の責任が伴う。何かあるのなら、話せ」
「……それは、自分の眼で直接見た方が、早いかも」
「どういうことですか?」
「……」
ヴァーノとソールの質問に、ウォルがそれ以上答えることは無かった。仕方なしに二人は聞き出すのを諦めた。休息を終えると、件の町ラバンカを目指し、再び一行は足を進める。
(さっきのウォルさんの反応、何か知ってるのは確かなんだけれど……)
ソールは歩きながらも、ウォルの歯切れの悪い口調に、様々な想像を張り巡らせていた。
「……見えたぞ、あそこだ」
山道を暫く歩いて行くと、深い森を抜けだして開けた場所に到達した。そこからは、山に囲まれた町が一つ、見えたのだった。
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