第101話 施しの代償
「それで、何か収穫はあったのか?」
ソール達が宿屋に戻ると、部屋ではヴァーノとウォルの二人が待っていた。
「その様子だと、そっちも何かあるみたいですね」
「今訊いてるのはオレだ」
もったい付けてないで答えるようにと、ヴァーノはソールに視線を投げた。
「……この村には、『守り神』が居るらしいんです」
それからソールは、クルトが語っていたことを覚えている限り二人へと伝えた。
「なるほど。つまりこの村は困窮に瀕していて、それは今はその『守り神』への祈りが届いていないからだ、と」
ヴァーノはソールから聴いたことを要約し、その上で、
「下らんな」
そう一蹴した。
「村の現状がどれだけ悲惨だったとしても、それは村の政策が成っていなかったからに過ぎない。それを今更、いや今も『守り神』という超常の存在の責任にするとは……。大抵の町村は見てきたが、ここはどうにも神頼みが過ぎるんじゃないか?」
「ヴァーノ、それは言い過ぎ」
ウォルがヴァーノの服の袖を掴んで止めようとするが、
「いや、そうでもないぞ。元来こうした窮地を引き起こすのも脱するのも、そこに居る人間の自助努力というものだ。まぁ、『守り神』として祀られている存在も実際には魔導士か何かの存在が誤った方向性によって語られてきた結果残ったものだろうが、オレから言わせれば、それは唯の逃げ道にしかならん。『自分達はこれでも必死に頑張ったのに報われないのはきっと守り神の導きが無かったからだ』とな」
ヴァーノは余程この件が気に入らないらしかった。ソールはただ、その話をじっと聴いていた。そして、
「ヴァーノさん、貴方の考えは分かりました。その上で、お願いがあります」
と、ソールが切り出すと同時に
「断る」
短く言い伏せた。
「なっ、まだ何も言っていないじゃないですか!」
「オマエの言いたい事くらい予想出来る。どうせ、『それでも僕はこの村の人を助けたい。だから力を貸してください』とでも言うつもりだったんだろう」
そう言われて、ソールは押し黙ってしまった。
「いいか、ソール。分かってないと思うから言うが、施しは軽くあってはならない。何故なら、人間は一度施しを受けてしまったら、そこに『甘え』が生じてしまうからだ」
「『甘え』?」
ソールはふとヴァーノの発した厳しめな言葉を繰り返す。
「あぁ。正確には、『期待』だな。かつて伝承とは言え神に救われた過去があり、それに縋っているという事実がある以上、オレ達が介入してそれに対して再びの救済を望まないとは言い切れない。問題は、救済の先に自助努力があるか否か、それに帰結する」
「……」
ヴァーノの言葉に、ソールはただ、聴く事しか出来なかった。
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