第82話 一筋の光

 勢い付いて走って行ったルナを追い掛けて、ソールは走っていた。


(さっきのウォルさんの話、この町の男に捕らえられてるって言われても、それをどうやって探せばいいんだ……?現に色んな人に聞き込みをして、成果は無かったんだ。ひょっとしたら、その中にコハルちゃんをさらった犯人がいたかもしれないし……)


「ほら、ソール早くっ!」


 そうしたソールの思考を知ってか知らずか、ルナはソールを急かす。わざわざ戻って来て、ルナはソールの手を掴み、引っ張る。


「そうは言っても、どうやって探すつもりなの?」


 と、足を早めるルナにソールは内なる疑問を投げ掛けた。


「……っ、そんなの気合いよ気合いっ!片っ端から探せば、きっと見つかるはずよ!」


 そう意気込むルナに対し、


(流石にそれは無茶だ。ルナだって、本当は分かってるはずなんだ。でも、それを真正面から『非効率だ』なんて言える判断材料が今は無い……。僕だって、何か良い案がある訳で無し。どうすれば……)


 と、ソールが考えている時だった。ポケットにしまい込んでいた懐中時計が、突如として眩い光を放った。


「……!?」


 それに気付いたソールは、ポケットから時計を取り出した。


(何だ、この光……?前に力を使った時の光とは何か違うような……)


 その光はまるでソールに何かを伝えようとしているかのような、眩くも強弱のある光だった。


(この光、僕を何処かに導いているかのような、そんな光り方をしてる気がする)


 確証は無かったものの、ソールは直感的にそう思った。


(……少しでも可能性があるのなら、それに賭けてみる価値はある、か)


「ルナ、僕に付いて来て」


 そう言ってソールはルナに掴まれた手を今度は自分で掴み直す。


「え、ソール?……その時計」


 突然手を引かれて困惑したが、少女は少年の手中に収められた時計を見ると、何か考えがあるということを察知し、言う通り付いて行くことにした。


(僕が動くと、時計もそれに合わせるように光が変わってく……)


 ソールの感じていたことは当たっていた。時計の発する光は移動する度にソールの居る位置に連動するかのように強さが変化していた。


(間違いない、この時計は僕達を導いてる。でも、何処に……?)


 疑問に思いながらも、ソール達は右へ左へ、時計の光の導くままに町の中を巡って行く。






 時計の光が一段と眩い光を発した場所でソール達は立ち止まった。すると時計は徐々に光を弱め、遂には発光しなくなった。まるで今の役目を終えたかのように。


「……」


 ソール達は立ち止まった場所に驚きを隠せなかった。何故ならそこは、コハルの家の蓮向かいに位置する家の前だったからだ。


「灯台下暗しってこのことね」


 ルナはそう言うと、家のドアをノックした。すると中から一人の男性が顔を出したのだった。

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