第81話 少女の行方や如何に
「なっ……!?」
ウォルの紡いだ言葉に、ソールは一瞬言葉を失った。気付けば足を後ろに退かせていた。
「それって、どういうこと?」
圧倒されているソールに代わり、ルナがウォルに問いかけた。
「言葉の通りよ。あの子は、この町のある男に、攫われてしまっている」
「……何でアンタが、そんなこと知ってるの?」
ルナはウォルに厳しい視線を向けながら詰問する。するとウォルはバツが悪そうに下を向きながら、
「本当は、ヴァーノに口止めされてるけど……放っておけないもの」
ウォルが何処か思い詰めた表情を見せると、それに対しルナは思う所があったのか、
「……分かった。どの道、今は他に情報なんて無かったし……一旦アンタを信じるわ」
ルナはそう言うと、
「……ありがとう」
と、ウォルに対し少し照れくさそうに礼を述べた。
「……」
それに対しウォルは特に表情に出すことなく、夕闇の町に消えていった。
「よしソール、貴重な情報を得たからには、絶対に見つけるわよ!」
と、ルナは勢い付いて走って行く。
「……」
一方のソールは、再び胸を駆け巡った嫌な予感に、不安な表情を浮かべるのだった。
「……」
キォーツの町を、ウォルはコツコツと靴音を鳴らしながらゆっくりと歩いていた。それは落ち着き払っているからではなく、寧ろ逸る鼓動を無理やり落ち着かせるための挙動だった。
「よう。随分とアイツ等にご執心じゃないか」
と、そんなウォルに話し掛けたのは、同じ魔導士のヴァーノだった。
「……別に、そんなんじゃない」
ウォルは普段見せる不安気な表情で、ヴァーノを見つめる。
「その割にはやけにアイツ等のことを気に掛けてるんじゃないか?この間のイーユの町でのことといい」
「……!?知ってたの?」
「逆に訊くが、オレが知らないとでも思ってたのか?」
呆れたような溜め息と共に、ヴァーノは言った。
「いいか?飽くまでもオレ達がアイツ等を監視しているのは、あの『時計』の為だ。それ以上の感情は持ち合わせるべきじゃない。オレ達は、『教会』側の人間なんだからな」
そんなヴァーノの言い分を聞いたウォルは、
「分かってる。……だけど、あの子達を見てると、昔の私達を思い出すの。……純粋だったあの頃を」
悲し気な声で言うウォルに対し、ヴァーノは自身の眼を細くし、黄昏る表情を示した。
「あぁ……。だが、オレ達があの頃みたいに戻る為には、あの時計が必要なんだ。分かってるとは思うが、そのことを胸に刻んでおけよ。……しっかりとな」
そう言うとヴァーノとウォルは、町の宿へと入って行った。
「さて、こっちはこっちで練るとするか」
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