第80話 少女の失踪

「やっぱり聞き込みは無意味、か」


ソールは予想していたとはいえ、散々な結果にげんなりしていた。


(嫌がらせを受ける程厄介者扱いされていたとはいえ、ここまでとは思わなかった……)


ソールは自分の考えが甘かったということに反省をした。


「ねぇ、ソール。どうして、コハルちゃんはこんなに……」


 ルナは悲し気な表情を浮かべていた。


「今は同情してる暇はないよ。……とにかく、思い付く限りの場所を探そう!」


 そう言うソールにも、内心では焦りの色が見えていた。


(こんなに聞いて何の情報も舞い込んでこないってことは、町の人に声を掛けても無駄だってことだ。つまり、僕らの足で探すしかない……)


 ソールは目の前の現実に打ちひしがれそうになりながらも、必死に少女の行方を追う。少女の姿を初めて見かけた広場や自分達の泊まっている宿の周辺、川沿いの石畳の道など、思い付く限りの場所は見て回った。しかし、コハルの姿は何処にも無かった。そもそもソール達はまだこの町に来て日が浅い。そのため、地の理については殆ど無いといっても過言ではなかった。これでは、どの道探しようも無い。そんな中で一人の少女を探すこと自体が無理難題であるということは、まだ少年少女の彼らにも分かる程に明白だった。


「くそっ、何か方法は無いのか……!?あの子を探す手段は……」


 と、必死に少年が策を考えていると、


「困ってるようね」


 いつの間にか近くに来ていた、女魔導士ウォルが声を掛けてきた。


「ウォルさん……」


 目の前に現れた魔導士に対し、ソールは悩んでいた。果たして、彼女は自分達に協力してくれるのだろうか、協力の対価として時計を再び要求して来るのではないか、と思考が錯綜していた。


「何か用?」


 そう考えている内に、ルナの方がウォルに強気に話し掛けた。


「何の用か、と訊かれると、貴方達に教えに来たの」


 ウォルは相変わらずの何処か自身の無さそうな声で、ソール達に向けて言う。


「……あの子がどうなってるのかを、ね」


「……!?」


 その言葉に、ソールとルナは強い反応を示す。


「知ってるんですか!?あの子は……コハルちゃんは、一体何処に居るんですか!?」


 ソールは告げられた言葉に反射的に反応し、ウォルの肩を両手で掴み、勢いに任せて訊いた。


「……痛い」


 掴まれたウォルが声を漏らすように言った。


「あっ……ごめんなさい」


 我に返ったソールが、ウォルに謝罪する。


「……落ち着いて。まだ、あの子は助かる。あの子は、捕まってるの。……この町の人に」

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