第73話 少女を救う為には
「あの子が使ってるのが、『魔導』……?」
ルナは眼の前の男が言った言葉を確認するかのように
(……やっぱりか)
彼女の横に立っていたソールは、粗方の予想通りといった様子で落ち着き払っていた。
「あぁそうさ。尤も、あの子はどんな力なのか知らず使っている様子だがな」
ヴァーノは至極面倒臭いといった雰囲気で言った。
「……どうして、知ってるんですか?」
ソールは恐る恐るヴァーノに尋ねる。
「僕達がこの町に来たのが二日前、そしてあの子に出逢ったのは昨日です。それなのに貴方は、あの子のことを僕達よりも知っている。流石に手際が良過ぎるんじゃないですか?」
(まぁ、ルナがあの子に逢ったのは初日の夜だけども)
「そう疑問に思うのも無理は無いか。だが、別に不思議では無いだろう。何せ、お前達の後をずっと追い掛けていたんだからな」
「えっ?」
ヴァーノの言葉に、ソールは思わず声を漏らした。
「お前達が騎士団と共に旅を続けていたことも、ギルから逃れこの町に辿り着いたことも、オレ達は把握していたという訳だ」
続け様に言われたことが、ソールの気持ちを逆撫でする。
(僕達はずっと見られていた……それはつまり)
「つまり、ギルに、あいつに騎士団の皆が襲われていたのに、貴方達は助けもせずにただ見てただけだって言うんですか!?」
ソールの突然の大声に、隣の少女は驚いた。
「ソール……」
しかし、彼の心情を想うと、少女もやるせなさを感じずにはいられなかった。
「そう気持ちを荒立てるな。オレ達は飽くまでも『教会』の人間だ。『教会』には他の魔導士が関わる事柄については触れないという暗黙の了解ってもんがある。それに騎士団とは確執もあるし、追われる立場でもある。下手に手を出せば割を食うのはこっちだ」
ヴァーノは口から煙を吐き出した。
「話が逸れたな。ま、要はお前達がこの町に来るタイミングでオレ達も着いていたということだ。それからオレ達もこの町で起きている怪奇現象を小耳に挟み、そこに『違和感』を覚えて調査したという訳だ」
ヴァーノは横のウォルに目をやり、
「尤も、そこら辺のことを言い出したのはコイツなんだがな」
そう言うと、隣の女はバツが悪そうに目を逸らした。
「経緯は分かったわ。でも、この件から手を引けってどういうことなの!?」
それまで話を静かに聴いていたルナが口を開いた。
「そう力むなよ、お嬢さん。これはお前達にとっても悪い話じゃないんだぜ?」
ヴァーノは再び煙草を口に咥え直して続ける。
「さっきも言ったが、オレ達は『教会』の人間だ。他の魔導士の件には触れないが、無秩序に『魔導』が使われているのであれば、話は別だ。オレ達には、『魔導』を司る者としてそれを律する義務がある」
そこまでヴァーノが言った時、ソールが口を挟んだ。
「つまり、あの子を『どうにか』するってことですか?」
その質問に対し、ヴァーノとウォルはただ黙っているだけだった。
(返答は無し、か。いや、返答しないということは、肯定したということも同然、つまり……このままじゃ、コハルちゃんは)
ソールがそこまで考えた時、
「ダメっ!!」
隣の少女が叫んだ。
「あの子は孤独だった。それが『変な力』を使うようになったきっかけだったの。だから、あの子は」
「悪くないとでも?
少女の言葉を、ヴァーノは真っ向から否定した。
「それが
冷たく、そして正しく、男は言う。
「さぁ、もういいだろう。悪いことは言わない。大人しく引き下がれ」
その言葉に、ソールは……
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