第71話 少女の為に成すことは
「ねぇ、ルナ。僕ってやっぱり、お節介……なのかな」
宿に戻り、ソールの宿泊する部屋にソールとルナは戻っていた。
「……」
ルナは腕を押さえ、外を見ていた。
(そう言えば、ルナも……)
ソールはふと目の前の少女のことを考える。
(ルナも昔、周りの子達に虐められてたっけ……だから、あの子の気持ちが分かるんだ)
ソールは眼を細め、物思いに
(もしかして、ルナはあの子を助けたいんじゃないのかな?だからこそ、あの子の味方になりたいって思ってるんじゃ……だとしたら、いや、だとしても)
そのように考え込んでいた時、
「ほらまた、そんな風に一人で考え」
いつも傍らにいる少女の注意が聞こえた。しかし、
「ダメだよ」
それを遮ってソールは言った。
「ルナがあの子に昔の自分を重ねてるのは分かる。でも、ダメなんだ。こんなことじゃ」
それは否定というよりも、そうであって欲しいという願いのようだった。
「確かに、あの子の味方になるなら傷つけずに済むのかもしれない。でもこの方法じゃ、あの子がいけないことをしてるって分からせてあげることが出来ないんだ。だから……」
「分かってる!!」
そこまで聞いていたルナは、突如として大きな声でそれを遮った。
「分かってる……あの子の為にはならないってことくらい。でも、私には、あの子にはこれ以上傷ついて欲しくないの」
それはまるで優しく娘を想う母親のような、強い意思の込められた言葉だった。
「ルナ……」
ソールはその言葉から、ルナの心情を更に読み取ろうとした。
(ルナだって、ちゃんと理解してるんだ……本当にあの子の為にはならないんだって。でも、分かってても、他にやり方なんて分からないんだ。偉そうに言ってる僕だって、そうじゃないのか……?)
同時にソールは、己を恥じた。
(ルナにはいつも、一人で考えてばかりでなんて言われるけど……考えた所で、問題の解は導き出せずにいるんだ。そんな今の僕に、ルナを止める資格なんてあるのか……?)
ソールはその胸中で自問自答を繰り返す。
(そんな資格、無いのかもしれない。……でも、このままじゃいけないんだ。それはルナだって分かってる。だったら……)
「ルナ、僕には何が正解なのか、何が正しいのか分からない。でも」
しかし、ソールは語るのを止めなかった。
「今のままじゃ、コハルちゃんも、そしてルナも、前には進めない。僕はそう思うんだ」
その言の葉に、ルナは口を噤んだ。それはソールの言い分を拒絶しているのではなく、寧ろその言葉の端々を胸の内で飲み込んで、理解していたからこその反応だった。
「前に言ってくれたよね、一人で考えるなって。だったら、ルナも一人で抱え込まないでよ。僕の隣にルナが居るように、ルナの隣には僕が居るんだ。だから、一緒に導き出そうよ、コハルちゃんを救う方法を」
続け様に発せられた言葉に、ルナはただ、コクリと首を縦に振った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます