第67話 火の玉が誘うその先は
「……あの子、何処に行ったんだろう?」
結局、探していた少女は見つからずに宿まで戻って来た。日が沈んだこともあり、二人ともその日は切り上げることにした。
「それにしても、何の収穫も無しかぁ……」
ルナがガッカリした様子で溜め息を吐いた。
「……いや、そうとも言い切れないよ」
「え?」
「今日聞き回ったことで、この町の一連の怪奇現象には一貫性が無いことが分かった。それだけでも十分な収穫だったよ」
そう言ったソールを、ルナはじっと見つめていた。
「な、何……?」
「……何か、頼もしいソールって感じだね」
不意にルナが呟く。しかしそれは少年には聞こえなかった。
「え?」
「う、ううん。何でもないっ」
聞き直そうとするソールに、ルナはただ赤面して俯くだけだった。
その日の夜、ソールの部屋。
「……今日は現れるのかな」
ソールは昨晩現れた火の玉が気になって寝付けずにいた。
(昨日見たばかりの僕でさえ気になってるんだ。ましてやこの町の人は何回も見てるはず……。そりゃあ不安にもなるよ)
少年は町の人々に対し、同情にも近い念を抱き始めていた。
(それにしても、あの女の子……)
少年はふと昼間に見た少女のことを考えていた。
(
と、そこまで考えた時だった。
「……!あれは」
少年は窓の外に、淡い光を見た。その光は昨晩見たものと非常に似ていた。
(……確かめてみるか)
バッと少年は布団から出ると、宿の外に向けて静かに歩き始めた。
「確かこっちの方に飛んで行った気がしたんだけど……」
ソールは窓越しに見えた光の進んで行った方向を頼りに、町の中を歩いていた。
「……あれは」
火の玉を探していたはずのソールは、想定外な人物を目撃した。それは昼間に見かけた少女だった。
(こんな時間に、しかもまた一人で……)
ソールは不審に思い、まだ名前も知らないその少女の行く先を追うことにした。
「……」
少女は家々の並ぶ路地を鼻歌交じりに闊歩していた。その姿にソールは不思議な感覚を覚えた。昼間に見かけた時と同じように、少女は一人にも関わらず寂しげな雰囲気が見られなかったからだ。
(あの子、やっぱり何かあるのかな)
ソールは直感的にそう感じていた。すると、
「……」
少女は周囲を見回して警戒の素振りを見せた。一通りの注意を払い終わると、少女は虚空に両手を伸ばした。
「……?」
その様子をソールがはてなと思いながら見ていると、
突如として、少女の目の前に火の玉がぼうっと現れた。
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