第47話 再出発
騎士団との交流を
「あ、お兄ちゃん達だ!」
そう言いながら勢いよく走って来たのはクレイだった。
「ねぇ、何処に行ってたの?朝早くから見えなくて心配したんだよ?」
「そっか、ごめんね心配掛けて。でも、もう大丈夫だから」
ルナはクレイの背丈に目線が合うように腰を下ろし、
「悪い奴らは居なくなるから。この町はもう大丈夫だよ」
「ホント!?ホントなの!?」
繰り返し少年はルナに訊く。
「本当だよ、だから、もう何も心配しなくていいんだよ」
「……ありがとう!お姉ちゃん、お兄ちゃん!」
クレイは笑顔で走り、遠くから歩いてくるクレアの方へと駆け寄って行った。遠くでクレアが二人に一礼する。
「……やっぱり、やって良かったわね」
「そうだね。でも、あれは流石にやり過ぎだったよ?」
ソールはキースと対峙した時のことを思い出しながら、ルナに言った。
「だって……あの時は夢中だったから」
「何だ、散々言ってもルナだってそういう所変わってないじゃないか」
「何よ、ソールのクセに」
口元に笑みを浮かべながら、二人はそう言い合った。
「……でも、私のせいでソールに怪我させちゃった、よね」
「え?」
ボソッとルナが呟く。その後、
「ごめんなさい!」
ソールの手を取り、深く頭を下げて謝った。
「ルナ?」
「私が考え無しに突っ走ったから、だから、ソールを傷付けた」
「平気だよこれくらい」
「でもっ……!」
ルナの顔を見ると、その眼には涙が浮かんでいた。
「そんなしおらしくしないでよ、ルナらしくもない」
ソールは空を仰ぎつつ、そう言った。
「それに僕もそうしたかったからそうしただけだよ。ルナが気にすることじゃないさ」
「……ありがと、ソール。やっぱり、ソールは……」
「……?」
「ううん……何でもない」
吹っ切れたように、先程とは打って変わって彼女は晴れた表情を見せた。
「じゃあ、元気でね」
「もう、行っちゃうの?」
イーユの町を発とうとするソールとルナを、クレイが見送りに来た。しかしその表情には寂しそうなものを感じさせていた。
「もっとお兄ちゃん達と話したかったのに。まだこの町にいればいいのに」
小さな少年は口を尖らせながら言った。どうやら余程不服らしい。
「そうしたいのはもちろん僕らも同じだよ。でも、僕らには向かうべき場所があるんだ」
「それって、昨日言ってた旅の目的っていうやつでしょ?でもそんなに急がなくても……」
その時、クレイを後ろから抱き締め制止させる人物が居た。クレイの姉、クレアだった。
「
その問いにソール達はコクリと頷いた。
「それなら、その目的が終わったらまた遊びにいらっしゃい。そうすれば、クレイだってお話が出来るでしょう?」
「……分かった。それまで我慢する」
少し悩んでから、クレイはそう答えた。
「じゃあ、絶対また来てね、約束だよ!」
「うん、大丈夫だよ。約束する」
そう言ってソールとクレイは小指を結んで約束を交わした。
「それじゃ、それまで元気でね」
「うん、お兄ちゃん達も、頑張ってね!行ってらっしゃい!」
そうして、少年達に見送られながらソールとルナはイーユの町を後にしたのだった。
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