第46話 一つの終わり
「それにしても、どうしてあいつが魔導士じゃないって分かったの?」
カクイの屋敷の前ですっかりと力が抜けてへたり込むソールに、ルナが問いかけた。
「……最初におかしいと思ったのは、昨日も会ったあの人、ウォルさんの言葉なんだ」
「あの女の人?」
ルナが小首を傾げる。
「そう。あの時、あの人は『領主には注意しろ』って言ったんだ。同じ魔導士なら、キースのことを気を付けろって言ってもおかしくなかったのに」
「でも、あの人がキースを知らない可能性もあったんじゃない?」
ルナは当然抱くべき疑問を口にした。
「それは無いんじゃないかな?カクイについては危険な男だとか、裏の顔を知っていたのにその側近については全く知らないなんて不自然だよ」
「そう言われれば……」
さらにソールは続ける。
「それにさっきルナが飛び出した時……今まで出会った魔導士はまだ数える程だけど、それでも確かに思ったんだ、気迫が違うって。こっちに対する威圧的な迫力が、あいつには無かったから、もしかしてって思って」
「なるほどね」
「見事なもんだ」
ルナとソールが話していると、
「二人とも実に勇敢だった。それゆえに今回の一件を俺達は知り、無事に解決することが出来た。それは感謝している。一国の騎士を代表して言おう、ありがとう」
グランは片膝をつき、頭を下げる。再度頭を上げた時、
「だが、勇気と危険を恐れないことは違う。君達は一歩間違えれば、あそこでキースに殺されていたかもしれないんだぞ。優しいことは良いことだが、命を顧みないということとは別の話だ」
彼は二人に強く言い聞かせる。それに対し二人はしょんぼりとした後、
「「……ごめんなさい」」
グランに対し二人は揃って謝った。
「別に謝って欲しかった訳じゃないさ。ただ、それを分かってくれたのなら良かったよ」
真摯に受け止める二人に、グランは優しい眼差しで説き伏せた。
「……ところで、あの二人はどうなるんですか?」
ソールが恐る恐るグランに尋ねた。
「そうだな、領主カクイもその側近のキースも、一つの町を滅茶苦茶にしたんだ。それも長い歳月を経て、な。当然、その罪は軽いものでは無い。重罪として処されるべきだろう。それに、イーユの町には来られなくなる。この町も平穏を取り戻すだろうな」
「……」
(これでこの町が良くなるんだ)
重々しい声で語るグランの様子に、若干気圧されながらもソールは考えていた。町のこと、町の住民達のこと、更に言えば、ある少年のことを。
「それなら良かっ……うくっ!?」
「ソール?」
立ち上がろうとしたソールが声を上げた。それにいち早く反応したのは、隣に座っていたルナだった。
「ちょっと見せて……っ!これ、あの時の?」
ルナがソールの腕を見る。すると彼の腕には浅くも切り傷が見られた。
「きっとあの時……キースに対峙した時に付いたんだろう。……ちょっと待っててくれ」
そう言ってグランが鎧の中に手を入れ、何かを取り出す。そこから取り出したのは、一枚のハンカチだった。
「今はこれしか持ち合わせがなくてな、これで勘弁してくれ」
言いながら、グランは自分のハンカチをソールの傷口に巻き付けた。
「さながら、名誉の負傷という訳か」
フッと笑みを
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