第25話 魔導士が語るは……
男は煙草を口に咥えると、
「その懐中時計は『魔導具』の一種、魔時計だ。キミ達が何処でそのことを知ったかは知らないが、それは間違いない事実さ」
男は続ける。
「『魔道具』には様々な系統がある。元々力を秘めたものを加工して生まれたものもあれば、何者かの細工によって力を宿したものもある。その時計に関して言うならば、後者だろうな」
「……」
ソールはその話を静かに聞いていた。
「その時計はオレ達が所属している『教会』に以前まで居た『ある人物』が持っていたものだ。ソイツは時計に『星のルーン』を施し、力を与えた」
男が煙を吐く。
「……とまぁ、簡単に話せばそれは『特別な時計』ということになる。ただ、ここで疑問となるのは、どうしてキミがそれを持っているのかということだが」
その言葉に、少年はピクリと反応した。
「……これは、『ある人』から託されたんです」
「だろうな。そして、その人物は『教会』が追っている人物でもある」
「『あの人』が、追われている……?」
突然宣告されたことに、ソールは動揺した。
「どういうこと何ですか!?」
「落ち着け」
思わず叫ぶ少年に対し、男は短く制した。
「『彼女』は『魔法使い』なのさ」
「まほう、つかい……?」
ソールが疑問を発する。
「それって、おとぎ話に出てくる?」
ルナが続けて疑問を口にした。
「でも、それってお話のものなんじゃ……」
「本当にそう思うか?」
ルナの発言に、男は問いを投げかけた。
「この世には魔導というものがある。キミ達も既にその身で体感しただろう。だが、それだけじゃないんだよ。魔導を超える魔導……オレ達魔導士はそれを『魔法』と呼んでいる」
「魔導を超える魔導……」
「あぁ、そうだ」
男はまた煙を吐いた。
「彼女がその時計に施した細工は、破格の代物でな。オレ達魔導士じゃあとてもじゃないが付与することさえ出来ない強力な魔法だ」
「これが……」
ソールは手に持った懐中時計をじっと見つめる。
「彼女は『教会』に属していたが、ある日突然、『教会』から姿を消した。『教会』はそれを背信行為だと受け取り、彼女を追うこととなった」
「どうして、ですか?」
ソールが恐る恐る訊いた。
「彼女と、彼女が持つ時計の力があまりに強大だからさ。危うく、世界の理を崩しかねない程にな」
「……」
その言葉に、傍らにいた青髪の女は何か思うところがあるのか、腕を抱えた。
「魔導を司る『教会』としては、みすみす見逃す訳にもいかない。だからオレ達は、彼女とその時計を追っていたのさ」
「……」
ソールは思考する。
(『あの人』が、追われる立場の人だったなんて……。じゃあ、どうして僕なんかに『これ』を託したんだ?)
「さぁ、これで十分に分かっただろう」
男が再三煙を吐きながら言った。
「その時計を渡して欲しい」
(渡す……この時計を……)
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