第21話 いざ学院へ

 翌朝、ソールは制服に着替え、ルナと一緒にジーフ学院に登校することになった。ジーフ学院の制服は青色を基調とした上着に紺色のズボンと落ち着いた色合いの制服だ。女生徒の制服はズボンの代わりに紺色のスカートとこれも学院指定の制服となっていた。


「おはよう、ソール!」


 ルナは昨日までの出来事を吹き飛ばそうとするかのように元気にソールに声を掛ける。


「……おはよう、ルナ」


 一方のソールは昨晩のことがあってか恥じらい混じりに挨拶を返した。


「何~?もしかして照れてるの?」


「なっ、別にそんなこっ、ことは!?」


「はいはいソールはホントに分かりやすいなぁ」


「……」


 再び昨晩を思い出し、ソールが顔を赤らめる。


「ほら、早く行こうよ」


 それを誤魔化すように少年は足早に学院に向かう。


「……ふふっ」


 やっと見られたいつも通りの光景に、自然とルナの口元は緩んでいた。






「おはよー。ソール、ルナー」


 学院の教室に着き、黒色の長い髪をした男子が声を掛けてきた。


「あぁ、おはよう、ロイ。」


 その声色に何かを感じたのか、挨拶を返されたロイが怪訝な表情をした。


「……?どうした、何かあったのか?」


「え?」


「いや、何となーく元気ねぇかなって」


「あぁ……、いや、何でもないよ」


「そっか?ならいいんだけどよ」


(……流石に鋭いな)


 ロイとはルナと同じ頃からの付き合いだったが、昔から勘の鋭い所があった。その勘はソールをドキっとさせた。


「やっぱり皆には言わない方がいい、よね?」


 ルナが小声で話しかけてきた。先程のソールの反応から察したのか、その声には若干の逡巡しゅんじゅんが感じられた。


「うん……。迂闊うかつなことを言って誰かを巻き込みたくはないし。……そう言えば」


 そこでソールは何かを思い付いたようだった。


「どうしたの?」


「いや、昨日のヤツが言ってた『人払い』なんだけど」


「……あぁ、そんなこと言ってたね」


「うん。それでその『人払い』って何処まで影響されるのかなって」


「どういう意味?」


「いや、人を近づけさせない力なら、それにも範囲があるんじゃないかな?例えば、あの騒動のことを音だけでも聞いた人はいるかも」


「あっ、そっか」


「その『異変』に気付いた人ならさ、もしかしたらアイツ等がやっていた『魔導』を見たり聞いたりしたんじゃないかなって思って」


「なるほど、確かにそうね」


 ソールの言い分に、ルナは全面的に肯定した。


「それで、昨日のことだけでも知ってる人がいるか確かめたいんだ」


「……分かった。じゃあ時間があったらいてみようよっ」


「うん」

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