第14話 強襲と突破口

 それは三メートル程の大きさの、土で出来た巨人だった。二人は、男と巨人に挟まれるように回り込まれてしまった。


「何なのこれ、これも魔導なの!?」


「ほう。魔導を知ってるのか、嬢ちゃん」


 後方から男が言った。


「てことは、『あいつ等』も力を使ったってことか。にも関わらず逃げられちまうたぁ情けねぇ」


 男は続けた。


「そいつは魔導で作り上げた俺特製の土人形さ。お前等じゃあどうすることも出来ねぇだろ」


「だ、誰かーーーーー!!助けて下さーーーーーい!!」


 甲高い声で、ルナが叫んだ。しかし、それに反して誰も顔を出すことはなかった。


「無駄だよ嬢ちゃん。『コイツ』を使ってるからねぇ」


 そう言って男は、懐から木の札を取り出した。そこには、月の模様が描かれていた。


「コイツぁ『人払いのルーン』つってな。人を寄せ付けない力を持った優れもんさ。つまり、誰もここには来ねぇってこと。折角大声出して叫んだのに残念だったねぇ」


 男はゲラゲラと下卑た笑い声を上げながら言った。


「そ、そんな……」


 助けを求めても無駄だという事実を前に、少女の顔が青ざめていく。握った手の力が徐々に弱くなっていくのを、ソールは感じていた。


(ルナはこんな状況なのに、頑張って僕を連れて逃げようとしてくれた。こんな僕を、助けようとしてくれたんだ)


 少年の中で、あらゆる感情が渦巻いた。


(怖い。でも、ここで僕が動かないと……)


 ソールは渦巻く感情の中、一つの決心をし、そして、


「……ルナ、今度は僕が」


「え?」


「今度は、僕の番だ!!」


 そう叫び、今度はソールがルナの手を強く掴み、走り出した。


「早く!全力で走るんだ!!」


「逃がすな、木偶人形!」


 男の指示に従い、巨人の拳が二人を捉えようとする。


「危ない!」


 少年は少女の腕を力強く引っ張った。次の瞬間、先程まで二人の居た所へドゴン!!という鈍い音と共に土の拳が炸裂した。見るとその地面はガラガラとレンガが割れていた。


(……嘘でしょ!?何なのあれ!?)


 余りの衝撃に、少女は身を震えさせていた。


(あんなの、直接当たったら一溜ひとたまりもないじゃない!?)


 その震えは手を通して、少年へと伝達していた。


(くそっ、どうすれば……)


 考えるソールの目に、一つの道が映り込んだ。


(そうか、細い道なら、もしかしたら……!)


「こっちだ、急いで!」


 そう言ってソールは、家々が立ち並ぶ間の路地へと走って行った。


「……チッ。逃がすかよっ」


 男は舌打ちをしつつも、逃げた二人の後を追っていく。

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