第12話 図書館の帰路
「え、何で……」
「ページが、ない……?」
破り取られたページを見つめて、ソールとルナは
「どうして!?まさか、昨日の人達が……?」
思わず大きな声を出してしまい、ルナは周りを気にした。そしてお互いに小声で話を続ける。
「……ううん、多分違うんじゃないかな。ページの切れた部分を見るに、かなり前に破られたんだと思う。それに、昨日のやつらがやるんなら真っ先に僕を直接襲った方が手っ取り早いよ。わざわざこんなまどろっこしいことをする必要もないと思うし」
一旦冷静さを取り戻したソールが看過する。
「じゃあ一体誰がやったんだろ?」
その時、ソールの頭にはある人物の姿が思い浮かんでいた。
「……あの人かもしれない」
「あの人って……ソールの恩人の人?」
「……」
言葉にはしなかったが、ソールは静かに首を縦に振った。
「でも、なんでその人がこんなことを?」
「それは……分からない。でも何となくだけど、そんな気がするんだ」
一方、ケイトの時計店では一人の客人が店を訪ねていた。
「いらっしゃい」
「……」
老人が出迎えに声を掛けるが、客人は反応を示さなかった。その客人は、白色のローブを目深に被っており顔は見えなかった。
「何か探しもんかい?」
「……」
客人は時計を探す素振りはあまり見せず、ただ空中に手を伸ばし、何かを呟いていた。
「……」
そうしている内に何かに満足したのか、そそくさと店から出て行ってしまった。
「……?なんだったんだ、今のは」
その様子を、老人ケイトは怪訝な表情でただ見ていたのだった。
「結局、星祭りの伝統だとか星占いだとかの本は結構あったけどあまりその時計について分かんなかったね」
図書館での本探しを一通り終え、二人は外に出ていた。いつの間にか夕日が沈む時間になっていたようで、外灯には灯りが灯っていた。
「……そんなことはないよ」
「え?」
「だってほら、昨日までこの時計は僕にとって『特別な時計』だったけどさ、今日こうやってルナと色々調べて『不思議な力を秘めた魔時計』かもしれないって知れたんだから。ありがとう、ルナ。今日付き合ってくれて」
「まぁ、一歩前進だよねっ」
少し嬉しそうにルナは言った。
「それにしても、あの破れたページ、あそこにはなんて書いてあったんだろうね?」
「さぁ……でも、きっと重要なことだと思う」
(最も、それについて知っていいのかどうか、それが問題な気がするけど……)
少女の横で、少年は思考する。
(僕らがそれを知ったら、知ってしまったら何かが明確に変わってしまう……。だからこそ『あの人』がページを破った。そう、僕が決して見ることのないように……。考え過ぎなのかな)
「あ!また何か思い詰めてるでしょ」
「……え?あ、ごめん」
「ほら、ソール結構そういうところあるよね。昔から」
「もう癖みたいになっちゃってるのかもね……」
「でももうちょっと私を頼ってくれてもいいんじゃない?」
「……気を付けるよ」
「よし」
そんな会話をしながら歩いていると、ルナがふと違和感に気付く。
「……ねぇ、ところでさ。なんか人が少なくない?」
「え?」
その言葉に反応してソールが周りを見渡す。確かに、彼女の言う通り人が少ない。というよりかは、いつの間にか全く人通りがなくなっていたのだ。
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