追放された最弱ハンター、最強を目指して本気出す〜実は【伝説の魔獣王】と魔法で【融合】してるので、余裕で無双できました。だからお前らが落ちぶれようが、どうでもいいわ〜

第49話 隊長はエゲツない強さでした

　リンゼイ隊長との勝負は2日後に練習場で行われることになった。SSSランクハンター同士の遠慮のない勝負ということで、念のためウラノスに観戦者や建物自体にも結界を張ってもらう。

　いまアトリアにいる特務隊のメンバーはもちろん、ファルコ団長を連れてランベール国王まで観戦に来ていた。国王は実力の確認のためとか言ってるけど、ワクワクした顔を隠せていない。本当Sランクハンターってこんなのばっかりだ。

　クレイグに聞いた情報だと、隊長は全属性の魔法が使えるうえに剣の腕も一流だ。遠距離も近距離も強いとか反則に近いんじゃないかと思う。国内最強というのもうなづける。

　だけど、オレも目的の為にこの勝負に勝たないといけない。確実にレグルスを葬るためには、特務隊の協力もほしいんだ。

「では始めるぞ」

「よろしくお願いします」

　隊長が両手をかざして構える。まだ腰にさした剣は使わないようだ。

「リュカオン、やるぞ」

『一番手ごたえのありそうな奴だな』

「そうだな、最初から全力で行く。唸（うな）れ、雷神」

　雷神の青い剣身から雷魔法が躍り出ている。バチバチと音を鳴らしながら、獲物はどこだと探しているようだ。オレは魔力を体中に巡らせて、身体能力も上げていく。

　エンジンがかかった状態で、まずは隊長の死角から攻め込んだ。それを見越していたかのように、雷魔法が効きにくい土魔法で防御される。

「大地の守り（ロック・ガード）」

　そしてガードされたと思った瞬間には、次の攻撃魔法が放たれた。

「氷の骸骨龍（アイシクル・ボーン）」

　氷魔法か！　それなら雷魔法で相殺する！

「青い雷龍（ブルー・ラグロス）！」

　冷気をまとう白い龍と、雷をまとう青龍がぶつかり合って白霧に変わる。衝撃を受け流して雷神を振り切った。

　ガキィィィン！！

　隊長は腰にさしていた剣を引き抜いていた。黒い剣身の片手剣だ。オレの雷神は片手で受け止められている。

「喰い尽せ、闇星（やみぼし）」

　黒い剣身から闇魔法があふれて、雷神の魔力を吸っていく。

　隊長相手じゃ、クレイグに使った方法は効かないだろうな。

「青い一撃（ブルー・インパクト）」

　雷魔法で隊長の意識がそれた瞬間に、距離をとった。今度は隊長から次々と魔法攻撃が繰り出される。

「ファイアストーム」

「ショック・ウォーター」

「サンダーボルト」

「ロック・ランス」

「アイス・ブリザード」

　間違いなく今まで戦った相手の中で最強だった。炎魔法が来たかと思えば水魔法が来る。そうかと思えば雷魔法が来て、土魔法で攻撃もしてくる。

　魔法の属性が変われば、攻撃範囲や躱し方も変わってくる。後手後手に回っていた。

　　　　　＊＊＊

　ランベール国王は全く違和感なくハンターたちに馴染んで観戦している。思わずこぼした言葉に返したのはクレイグだった。

「うわ、リンゼイの奴本気だな」

「だって奥さんと離れるから、出張は絶対に行きたくないって言ってましたよ」

　クレイグに相槌を打つのはオリヴァーだ。年の近いふたりは特別仲がよかった。

「レグルス討伐だと1週間はかかるもんな」

「あぁ、それは全力でつぶしに来ますね」

　納得といった表情でララも相槌を打つ。オリヴァーは隊長就任時の逸話を思い出していた。

「そうそう、奥さんと娘と離れるくらいなら隊長やって毎日家に帰るってなったんだもんな」

「だからこそ、今回の対決を組んだんだよ。これでどちらが負けたにしても、実力の証明にもなるし納得できるだろう？　何より僕がこの対決を見たかったしね」

　ランベール国王はとても爽やかな笑顔で、ポロリと今回の大戦を組んだ理由を口にした。

（（（……ホントいつも黒いな、この人）））

　その場にいた隊員たちは同じことを思うが、この興味深い対戦を実現したのも国王なのだ。誰も文句はなかった。ちなみに、リナとウラノスはカイトの応援に夢中で、この会話は全く聞いていなかった。

　　　　　＊＊＊

「リュカオン、やっぱり隊長は強いな。一発の威力もデカい。初歩魔法でアレだもんな」

『たしかにな、だがカイトわかっているであろう？』

「あぁ、オレとリュカオンなら負けない」

　魔法攻撃を受けて隊長の視覚から消えた瞬間に、カイトは黒狼に変身する。そのまま魔法をよけながら、隊長にに突っ込んでいった。

　直前で土魔法の壁を張られたので、人型に戻り雷神で壁を破壊する。いくら威力が半減するとしても、それ以上の魔力を込めれば破壊することは簡単だ。

　今度はカイトの顔面目がけて放ってきた氷魔法を、また黒狼になって回避した。隊長が放つ攻撃に最適な姿で切り返し、ジワジワと追い詰めていく。

　そしてついに接近戦になり、闇星と雷神が激しくぶつかり合った。

「喰い尽せ、闇星（やみぼし）！」

「青雷の破壊撃（ケラヴノス・クラッュ）！！」

「大地の守り（ロック・ガード）」

　よし！　雷神の魔力を吸われる前に隊長に土魔法を使わせた！

　そこで今度は隊長が土の壁の上から氷魔法で容赦なく攻撃をしてくる。

　これを待ってたんだ！！

「融合（フュージョン）！」

「なっ！？」

　すかさず隊長が放った土魔法と氷魔法を融合させる。これで土魔法の防御はガタ落ちになるはずだ。

　隊長の驚いた顔、初めて見たな。だけど、これでトドメだ！！

「青雷の破壊撃（ケラヴノス・クラッュ）！！」

　雷神を通して、膨大な魔力が込められた雷魔法がリンゼイを襲った。SSSランクハンターの遠慮のない攻撃に加えて、日々訓練や討伐で鍛え上げているカイトの攻撃の威力は、おそらく誰も耐えることなど出来ないだろう。

　リンゼイはゆっくりとカイトのもたれ掛るように倒れた。

「あー、強かった。隊長、半端なかった……！」

　決着がついたことで、ウラノスは結界を解除して、回復魔法をかける。

「聖なる雨（ホーリー・レイン）！」

　ウラノスの聖魔法は、カイトとリンゼイを優しく癒した。回復魔法が掛けられたことで、カイトに支えられていたリンゼイも意識を取り戻す。そこへ観戦していた隊員たちとランベール国王が駆け寄ってきた。

「俺……隊長が負けるところ初めて見た！！！！」

　一番興奮していたのはオリヴァーだった。ほんとうにカイトが勝つとは思っていなかったらしい。隊長も苦々しい顔でつぶやく。

「……やられたのは、12年ぶりだ……」

　そうだったのか……なんにしても倒せてよかった。これでレグルスの討伐に行ける！！

　ご機嫌の国王陛下も、カイトに太鼓判を押した。

「ははは！　さすがカイトだ！　間違いなく君がハンター最強だよ。私が保証しよう」

　うん？　ハンター最強！？　マジか！？　いや、そうだな、隊長の強さ半端なかったもんなぁ……目標のひとつが達成できちゃったな。真面目に仕事と訓練しててよかった！

「ありがとうございます……それじゃぁ、レグルスの討伐は……」

「仕方ないな……レグルス討伐に行くぞ」

　隊長は「妻に会えない日数を減らすには……いや、これよりも……待て、それなら……」とかブツブツ言ってたけど大丈夫なんだよな？

　集合は5日後になった。それまでにいまアトリアにいる隊員たちは準備を整え、残りは休暇にすることになった。出張中の隊員は任務終了後、至急アトリアへ帰還するように指示が飛んだ。

　オレとリナはレグルスとの決戦が始まるまでの、つかの間の休息をプロキオンで過ごすことにした。