第45話 国王陛下の勅命です
ワイバーン討伐後アトリアに戻ると、すぐに次の討伐の指示が出された。国王陛下からの勅命だ。オレたちは報告を済ませた翌日には、次の討伐へとむかった。
今回の討伐依頼は西の街ナオスからだ。この街は海とアトリアに挟まれた、商業の盛んな街だ。港にはいつも大型の船が止まり、物資のやり取りが盛んに行われている。
移動は黒狼がいいとリナにリクエストされたので、オレが足になる。だって、あのキラキラした瞳でお願いされたら……断れない。
ナオスのギルド長は、レッドドラゴン討伐の際の方言が独特なSランクハンター、チェルシーさんだ。レッドドラゴン討伐の貢献を評価されて、先月ギルド長に昇進したばかりだと聞いた。
そのチェルシーさんのご指名がオレたちだった。ヘラクリスに出発した後の依頼だったけど、戻ってくるまで待っていてくれた。
「かんにんな、ほんまは倒したのカイトやのに。ウチまで評価もろうてもうて、せっかくやさかい受け取ったけど」
「何言ってるんですか、皆さんの協力があったから倒せたんですよ。評価されて当然です」
「おおきに! せやったら、本題に入ろか」
「はい、テンペストタイガーの討伐ですよね?」
「そうやで。テンペストタイガーが街に近づくと、砂嵐で貿易や商品の流通が止まってまうさかい、討伐必須なんや。せやけど、あいにくナオスにはSランクハンターが少のうて、ウチ以外は他の魔獣で手一杯なんや」
テンペストタイガーはSランクの魔獣で、近づこうとするものなら風魔法が飛んできて大けがをしてしまう。もしも街に近づいてきたら、テンペストタイガーが引き起こす砂嵐で、街はすべての機能がマヒしてしまうのだ。
「わかりました。すぐ討伐にむかいます」
「早速で悪いけど、よろしゅうお願いします」
***
テンペストタイガーがいるのは、ナオスの街の南にある砂漠地帯だ。日中は容赦なく太陽が照りつけて、ハンターの体力も奪っていく。……氷魔法がなれば。
リナの氷魔法が本当に便利だ。炎極の谷でも助けられたし、いまもオレたちの頭上で太陽から守ってくれている。飲み水さえ切らさなければ、一週間くらい快適に過ごせそうだ。
極寒の雪国から高温の砂漠への気温変化はキツいけど、魔法があれば何とかなりそうだ。
「テンペストタイガーってどの辺にいるんだろう?」
リナが広大な砂漠を眺めてつぶやいた。オレにはSランクの魔獣の独特な匂いから、進むべき方向はわかっている。
「……こっちだ。乗っていくか?」
「いいの!? やった!」
「わ、私も乗っていいですか?」
何故かウラノスまでソワソワしながら尋ねてくる。……どうやら、ウラノスも黒狼の乗り心地が気に入ったらしい。これは、当番制にしよう。うん、一討伐か、もしくは一日交代でやろう。オレばっかりになりそうだ。ダメかと言われるとダメではないが、少しは抵抗してみたい。
「ほら、ふたりとも乗れよ」
黒狼になったオレは、テンペストタイガーにむかって、砂漠を走り抜けた。
しばらく砂漠を南に走っていくと、砂の壁のようなものが視界いっぱいに入ってくる。あれは砂嵐だ。
————見つけた。あの砂嵐の中に、テンペストタイガーがいる。
「ウラノス、状態異常の防御魔法を頼む。リナは砂嵐を風魔法で弱められないか?」
「わかりました!
「やってみるね。
ウラノスの魔法で、淡い光が俺たちを包み込んだ。これで砂嵐の中でも平気だろう。そしてリナの魔法で、砂嵐の巨大な壁がほどけるように打ち消された。
砂の壁が取り払われたあとに現れたのは、砂の竜巻だ。その瞬間に竜巻から風魔法の攻撃が繰り出され、無数の風の刃が3人を襲う。
「うわっ! めちゃくちゃ怒ってますね!」
「ちょっと攻撃するタイミングがつかめない!」
リナとウラノスは、攻撃を避けるので手一杯みたいだ。
「わかった! 一発ぶち込むわ!」
カイトは風の刃を避けながら、黒狼のまま青い稲妻を砂の竜巻にむけて放った。
「
青い稲妻は砂の竜巻に飲み込まれて、空高くまで駆け上がっていく。バチバチバチッと大きな音を立てたあと、ゆっくりと竜巻は消えていった。
そこには、目を赤く光らせたテンペストタイガーがオレたちを睨みつけている。砂嵐も竜巻も解除され怒り狂っているようだ。
「めちゃくちゃ怒ってる! カイト、どうする?」
「オレがやっちゃっていいか?」
「うん、お願い。砂嵐とか竜巻ができないようにフォローする!」
「じゃぁ、私は盾を作って風魔法をくらわないようにします!」
「それでいこう。すぐ片付ける」
リナは風魔法を使って、テンペストタイガーの作り出す竜巻を撹乱していた。ウラノスは聖魔法で飛んでくる風の刃を防ぐ。
「
「
黒狼のオレは、テンペストタイガーにむかっていく。襲いかかる風の刃はすべて躱して、一瞬で距離を詰めて目の前の魔獣の首に喰らいつく。
「
「グガァオオオオッッ!!」
テンペストタイガーの身体の中を、青い稲妻が駆け巡る。魔法が放たれた瞬間、叫び声を上げるがその後は固まって動かなくなってしまった。激昂して赤く光っていた瞳は、やがてその力を失いズルリと地面に倒れる。
リナがふーっとため息をついて声を上げた。
「カイトって、いつも魔法一発だよね」
「うーん、最近ますますそんな感じなんだよな。ひとつ下の魔法でもいけそうだったけど、万が一と思って……これ素材とか回収できるかな?」
「砂嵐が止んだから、私が運びますよ! とりあえずギルドに持っていって見てもらいましょう!」
「そうだな、ウラノス頼む」
そして、ナオスの街に戻ってチェルシーさんに報告を済ませた。
その後アトリアに戻り、隊長に報告を済ませると国王から次の指令がきていた。サクッと終わらせ報告を済ませる、次の指令がある……で、あちこち飛び回りSランクの魔獣たちを討伐しまくった。
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