追放された最弱ハンター、最強を目指して本気出す〜実は【伝説の魔獣王】と魔法で【融合】してるので、余裕で無双できました。だからお前らが落ちぶれようが、どうでもいいわ〜
第25話 ミリオンパーティーの行く末は⑦
第25話 ミリオンパーティーの行く末は⑦
俺たちが近衛騎士団のテントで待っていると、カイトが両手を後ろで縛られて連れてこられていた。
やっと、俺が認められるんだ! やっとあの街から抜け出せるんだ!! カイト! お前が追い詰められるのを、俺が見届けてやる!!
「ファルコ団長! 先ほど報告にあがった者を連れて参りました!!」
一際大きくて立派なテントにむかって、近衛騎士が胸を張って報告している。
これから起こるであろう、カイトの断罪の場面を想像してミリオンは久しぶりに上機嫌だった。
ティーンやトレット、サウザンもカイトの様子に興味津々でテントの隙間から覗き見ている。
「そうか! よく連れて参った……おい」
なぜか近衛騎士団長から、腹に響くような低い声が聞こえてくる。
「はっ! 如何なさいましたか?」
「なぜこの国の国王の命を救った英雄が、後ろ手に縛られているのだ!!!!」
ファルコ団長は、カイトの扱いに対して大激怒していた。ミリオンたちは、なぜ団長が怒り狂っているのか理解できない。
は……? なんで騎士団長は怒っているんだ? だってあんな危険なヤツは、縛っておかないと安心できないじゃないか!?
「今すぐ縄を取らんか!!!!」
「はっ!? はいっ!」
カイトを連れてきた騎士は慌てて、縄をほどいていた。そしてカイトの前に近衛騎士団長が膝をついて頭を下げる。
「我が国の英雄に大変無礼な真似をして、まことに申し訳ございません。私の謝罪では不十分でしょうが、どうかお許しいただけませんか?」
「いやいやいや! 頭を上げてください! ぜんぜん! まったく平気ですから!」
カイトも驚いたのか、頭を下げた騎士団長に慌てて駆け寄っていた。騎士団長はしぶしぶだが、立ち上がり姿勢をただした。
カイトを連れてきた騎士はすでに退場している。
「それでは国王がお話しをされたいと申しております。お時間をいただけますか?」
「は、はい……大丈夫です」
待て! 待て待て! なぜこんな展開になるんだ!?
なぜ、カイトが国王に謁見するんだ!? おかしいだろう! なんで魔獣と融合してるやつが英雄なんだよ!?
このハンター派遣に賭けてきた、最後の望みもカイトが持っていってしまうのか!? なんなんだ! あいつは、どこまで俺の邪魔をするんだ!!
ミリオンはジッとしていられなかった。感情のままテントから飛び出して、騎士団長の前に出て行く。他の3人もあとを追った。
「待ってください!!」
「君は……?」
「俺はプロキオンのハンター、ミリオン・ナバスです! そいつを国王陛下の前に連れて行くのは、待ってください!!」
「それは何か理由があってのことか?」
「はい、万が一、国王陛下に危険が及んではならないと考え進言しに参りました」
「ふむ……国王陛下に及ぶ危険とはなんだ?」
ファルコ騎士団長は、眼光鋭くミリオンを睨みつける。
国王陛下に危険が及ぶことなら、全てに対処しなければならないのだ。
「こいつは、カイト・シーモアは魔獣と融合しているんです! むしろ英雄ではなくて、危険な存在なんです!!」
「そうです、ファルコ騎士団長様! 野放しにしていたら、危険すぎます!」
「こいつは、魔獣の姿にもなるんです! あれで襲われたら、ひとたまりもありません!」
「今のうちに身柄を押さえないと、危険です!」
ミリオンの言葉に、ティーン、トレット、サウザンも続いた。全員ここで認めてもらって、なんとか国王軍に入りたいのだ。
「その報告は聞いている。だが、彼がレッドドラゴンを倒して、多くの命を救ったのも事実だろう」
「え、それなら、なぜ!? たまたま人助けしたからって、魔獣と融合している危険人物を捕まえないんですか!?」
「それは私から説明しようか」
その場に凛としたよく通る声が響いた。
姿を表したのは、このアルファルド国の国王、ランベール・ディ・アルファルドだ。
「何やら騒がしかったのでね、出てきてしまったよ」
そこにいる近衛騎士たち全員が、膝をつき最敬礼をする。
亜麻色の髪にライムグリーンの瞳が印象的な、30代後半の年若い王だ。先代が魔獣に受けた毒によって亡くなり、15年前から国王の座についている。貫禄は十分あった。
騎士たちに遅れて、カイトとミリオンたちも膝をつき最敬礼をする。
「みな顔を上げよ。ここで堅苦しい真似はしなくてよい」
その一言で、近衛騎士たちは立ち上がり直立不動の姿勢を取る。カイトとミリオンたちも立ち上がり、国王に向き直った。
「なぜ彼を拘束しないのかと訴えたのは君たちか?」
ランベール国王は尋ねただけだ。それなのに、威圧感を感じてミリオンは一瞬、言葉につまる。返事をするだけで、あとは何も言えなかった。
「……は、はい」
「それは彼、カイト・シーモアが魔獣王の力を掌握できていると報告を受けているからだ。ファルコ、そうだろう?」
「はい。プロキオンのギルド長エルナト・ヘイズリーより、書面および討伐証明書とともに報告がありました」
なっ……ギルド長だって!? なんでギルド長がカイトの味方をしてるんだ!! 炎剣の聖者だろ! 何をやってんだ!?
ミリオンはSランク以上のハンターが、判定を受けた際にギルド長の面談があることを知らなかった。そしてカイトがあの
「そういうことだ。君たちはエルナトの報告に異議があるのか?」
「異議……というより、魔獣を自分の中に取り込んでいる人間なんて信用できません」
他の3人も、力強くうなずいている。
「ふむ、そうか。まぁ、そういう意見もあるだろうな」
さすが国王だ! 俺の話も聞いてくれて、受け入れてくれるのか! やっぱり俺は間違ってなんかなかったんだ!!
「では、君とカイトでどちらが正しいのか証明して見せてくれないか?」
「え……証明、ですか?」
何を? どうやって証明するっていうんだ? あいつが危ないヤツだって、そんなの証明するまでもないじゃないか。
「そうだな。一週間後に王都の闘技場で、君たちとカイトで決闘するのはどうかな? うん、我ながらいいアイディアだ。それでいこう!」
「決闘……」
「カイトはすでに魔獣討伐もして、ドラゴンも倒している。それが危険だというなら、君もハンターなのだから体を張って証明する必要があるだろう?」
国王の言っていることはわかる。だけど、俺がやる必要あるのか?
「君がこの決闘でカイトの危険性を暴くか勝利するなら、私は君たちを国王軍にスカウトすると約束しよう」
「っ!! わ、わかりました。やってみせます!!」
これで……これで、俺の未来は開ける!! カイトの本性を引き出して……いや、決闘で俺が勝てさえすれば未来は開けるんだ!!
————どんな手を使っても勝ってやる!!
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