第24話 レッドドラゴンを討伐しました
「エリアさん! お待たせしました!」
「カイトか! はー、楽しかったけど、そろそろ限界だったんだよ。助かった!」
カイトは黒狼の姿のまま、レッドドラゴンを睨みつける。あのエリアさんが、ボロボロになっている。服はあちこち焦げて裂けていた。回復薬のリジェネ効果が効いているのか、傷はないようだ。
こうしてる間もディーノさんやセシルさん、リナもフォローの攻撃をしてくれている。急がないと全滅するかもしれない。
「エリアさん、距離をとってください」
「うん、なんかヤバい攻撃するんだね。わかった」
「リュカオン、行くぞ」
『うむ、いつでも良いぞ』
オレはそのままドラゴンにむかって走り出す。
他の街のハンターたちが近づかないように、ワザと姿を見せつけながらドラゴンの巨体を駆け上がった。
ドラゴンの首元に喰らいつき、全魔力を解放する。
「
まるで空から青く光る柱が降りてくるように、稲妻がほとばしった。レッドドラゴンに直撃して、そのままゆっくりと巨体を倒してゆく。
地響きを残して、レッドドラゴンは動かなくなった。
「ふぅ……これで心配ないな」
『久しぶりの大技で満足であった』
「はは、それは何よりだ」
人間の姿に戻って、これからの事を考える。
思いっきりリュカオンを姿をさらしてしまった。みんな他の街のハンターたちも、驚いた顔をしていたな。
あれがオレだって分かったら、ミリオンたちみたいに————リナも、オレから離れていってしまうかな。
それとも討伐対象にされてしまうかな。
まぁ、少しの間でも誰かと一緒にいられてよかった。
……それがリナでよかった。
「カイト————!!」
「リナ……」
リナが息を切らしながら、駆け寄って抱きついてきた。
えっ!? 抱きっ!! えええっ!?!? リュカオンのあの姿見てないのか!?
オレは固まって動けない。
「あの、リナ……?」
「ねぇ! あの黒狼はカイトでしょ!? レッドドラゴン倒しちゃうなんて、スゴイね!!」
ものすごくキラキラした青い瞳で見つめてくる。怖がったり嫌悪の感情は感じない。
……あれ? 黒狼の姿見ても、平気なのか……?
そこへエリアさんたちや、他の街のハンターたちもやってきた。
「カイト! あの魔法ヤバかったな! ドラゴン一発ってどんだけだよ!?」
「本当に……氷魔法の巨匠と呼ばれていた私が恥ずかしいです」
そう言ってエリアさんは笑っている。ディーノさんも苦笑いだ。
「ていうかさぁ、カイト! 黒狼になれるなら言ってよ! あのモフモフ触りたい!!」
「ああ! それ私も思いました! さすがお姉さま!」
セシルさん、ちょっと話の方向ズレてませんか? リナも便乗してるし、お姉さまって何だ!? ……そうか、そっちはそっちで仲良くなったのか。
いやいや、その前に、オレが勘違いする前に確認したいことがある。
「あの……オレが黒狼になって、怖かったり……気持ち悪かったりしないのか?」
「やっぱりなぁ、そんな後ろ向きなこと考えてんじゃないかと思ったよ」
「え! カイトまだそんな事考えてたの!?」
「何を言ってるのですか……普段のあなたを見ていたら、そんな風には思いませんよ」
「そんな事ないから、モフモフ触らせて!!」
そうなんだ……みんな、受け入れてくれるんだ。
そっか、よかった。オレはまだここに居てもいいんだ。
ていうか、セシルさんモフモフって……そんなに? はは、あんなに気にしてたのは何だったんだろう?
滲んでくる視界にうつむいた。
自分で思っていたよりも、ミリオンたちと過ごした8年で傷ついていたんだ。でもいま、こうしてオレはオレでいいんだと受け入れてもらえてる。
それが、とても嬉しくてたまらなかった。
「プロキオンには、すごいのがいたんだねぇ!!」
「なぁ、カイト、ヘラクリスに来ないか?」
「あ! 抜けがけはナシや! ヘラクリスなんかよりナオスにおいで」
「ちょっと! ウチの大事なハンターなんだから、引き抜きとかダメだよ!」
エリアさんが両手を広げて、オレをガードしてくれてる。
そこで、リナがコソコソと話しかけてきた。
「カイトが行くなら、私はどこへでもついて行くからね」
「うん、リナ……ありがとう」
そして、初めて連携攻撃した時みたいにふたりで
***
その頃ミリオンたちは、やっと避難したハンターたちに合流したところだった。
「さっきの青い光はなんだったんだ?」
「空に柱が立ってるみたいだったな」
「あれでレッドドラゴン倒したのかな?」
「あんな攻撃……一体誰が?」
ミリオンたちは、先程の攻撃がカイトではないかと考えていた。あんな魔力を持つ魔獣王と融合している人間がいる。
こんな危険な事実をはやく報告するために、ミリオンたちはハンター派遣の統括責任者に相談した。
「ええ? 魔獣と融合したハンターだって!?」
「はい、以前に本人からも告白されたましたし、さっきも魔獣の姿に変身してるのを見ました! アイツは危険なんです!!」
「本当にそんなのいるのか……?」
「さっきのドラゴンへの攻撃見ましたよね? あれも、そいつがやったんです! あんなら危険なヤツ、放っておけません!!」
「うーん、そこまで言うなら……近衛騎士団の団長に話してくるよ。待っててくれるか?」
もう少しだ。やっとカイトを俺の視界から消すことができる!! これでやっと、俺が認められる!!
***
レッドドラゴンの解体作業をしていたオレたちの元に、なぜか国王直轄の近衛騎士団がやってきた。
「カイト・シーモアというのは貴様か!」
「は、はい。そうですけど……?」
「貴様が魔獣王と魔法で融合してるいると、報告が上がっている。作業をやめて、今すぐ我々と一緒に来てもらおう!」
は? 何でそっちにまで、リュカオンのことが伝わってるんだ!? あんな遠くからじゃ、見えないはず……もしかして、ミリオンか?
アイツ……助けた時にオレだと気づいて、それで報告したのか? どうでもいいから放っておいたけど、まだオレから奪い足りないのか?
「待ってください。僕はプロキオンのギルドに所属しているエリア・ガルディナです。誰がそんなこと言ったんですか?」
「それはお前たちに話す内容ではない。とにかく、カイト・シーモアは我々と来るのだ!!」
「ふざけるなっ! 僕たちは命をかけて、このドラゴンと戦ったんだ! このカイトも一緒だ! そんな英雄に対して侮辱してるのか!?」
エリアさんたちハンターが、オレのために近衛騎士に食いついてくれる。でも、騎士たちも上からの命令なのだ。一歩も引かなかった。
「っ! だが魔獣王と融合というのは、無視できない内容だ!」
エリアさんたちハンターと近衛騎士たちが一触即発の状態だ。黙ってやられるつもりはないけど、エリアさんたちに迷惑をかけたくない。
「わかりました。一緒に行くので、もうやめてください」
「カイト!」
「大丈夫です。いざとなったら、何がなんでも逃げ出します」
コソッとエリアさんに伝えて安心させる。リナにも問題ないとうなずいてみせた。
本当にいざとなったら、全魔力を解放してでも
それなのに、このあと予想もしない方向に話は進んでいくのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます