1.あぽかりぷすなう
「さあ肩慣らしも済んだところで【ブルー・ブラッド】、君の仕事は簡単だ。【
鏡には、狩猟刀を佩いた黒地に青い瞳を持つ壮健な男性が映っている――まぎれもなく【あなた】の姿だ。
クイーン・ベルベットと言う人物に知り合いは居ないが、【あなた】の血が叫ぶ。
――殺せ。
【あなた】の本能がその名を聞いた瞬間から高揚を覚えさせる。この人物を殺せ、そしてその血の記憶を継承せよと。
【あなた】の記憶もそこに行けばあるのだろうか。とにかく【あなた】には目標が無い。目標が無い以上、この胡散臭い男とは暫く付き合う他ないようだ。
「とは言え、【クイーン・ベルベット】は【
【あなた】の本能が、【獣】に対する殺意を呼び起こす。【あなた】は【獣】に余程こっぴどくやられたのだろうか。
目標は2つ、大目標は【クイーン・ベルベット】の撃破、小目標は【獣】の討伐。
「だが、【獣】も【
ドクター・クランケが、上から放り投げたPDAを【あなた】はまるで置かれたものを取るかのように苦も無く受け取る。それと同時にシャッターが開き、暗がりから出た【あなた】はそこにあったものを見て驚愕する。
『――これが今の世界だ。人類の3割が【
文明の残滓、破壊の限りを尽くされた都市。【あなた】の眼前に広がるそれは、【あなた】にフラッシュバックを引き起こす。
――もし、私が、堕ちた時はお願いします。
誰の声かは分からないが、【あなた】にただ一つ分かることがあった。
――あなたは失敗した。
その誰かを殺す事か、解放するか、どちらかに失敗したのだ。そしてどうなったかは、【あなた】には分からない。
――眼下から漂う血の匂いが高揚で満たす。
【
先の戦いで覚えた不愉快な腐臭もする、【あなた】はそれが【
――殺す。
【あなた】は崖から飛び降りた。この程度落ちても大したことは無い。【あなた】は人間ではない、【
さて、血の気配は3つあった。1つは【
【
行き止まりに追い込まれた母親が、せめて幼い息子だけは守ろうと、抱きしめて背を向ける。
死を覚悟し、子供だけは、と祈った瞬間。
神はそれに応えた。
新たな試練と言う形で。
――殺す。
【あなた】はちょうど【
人間に見えるそれに、母親は目を見開いた。助かったのか、と。
【あなた】には目の前に居る【
不意打ち気味に現れたにも関わらず、先手を取ったのは【大槍の
悍ましい叫びを挙げて振るわれた大槍を――【あなた】は撥ねた。
――殺せ。
体勢の崩れた【
だが敵はまだ生きている。
――喰らえ。
左手でがら空きの胸郭をぶち抜いて、心臓を抉りだし、握りつぶす。【あなた】は【大槍の
「ヒィッ!?」
ぼたぼた、と、血を滴らせながら振り向いた【あなた】に、母親は悲鳴を挙げた。目の前に、血袋がある。
『まあ待ちたまえ【ブルー・ブラッド】、君が血に飢えた【
PDAからかなり大きめのドクター・クランケの声が響き、ドクター・クランケが母親の説得を試みる。
『君たち一体何処へ行こうと言うのだね? 見るにシェルターから抜け出て来たようだが、【人間】が歩き回るには危険そのもの。今とて【ブルー・ブラッド】が通り掛からなければ2人揃って【
【あなた】は黙っていた。目の前の血袋よりも、周囲に不愉快な気配が多い事が気に掛っていた。血に酔うにも、敵に奪われては意味がない。
『フムフム、【ブルー・ブラッド】の様子を見るに周囲にはまだ【
どう思われようが、足手まといを連れて行く趣味はない。【あなた】は戻ることを了承した。
母親は絶望したような顔をしていたが、【あなた】には関係が無い。
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