第15話
――しまった、忘れてた!!
「灯乃、誰だそいつ。それに何なんだよ、今の。春明さんも関係しているのか?」
灯乃がどうしようかと困っていると、雄二もまた斗真を見て眼を細めた。
雄二の言葉に、斗真はすぐに勘が働いて嘆息する。
――灯乃の知り合いであろうとは思っていたが。
春明の名で、何となく察しがついた。
「出てこい、春明」
呆れと怒りが入り混じった様子で斗真が声を上げると、近くの物陰から春明がひょっこり顔を出し、罰が悪そうにゆっくりと近寄ってきた。
彼も朱飛の襲撃を一歩遅れて気づきはしたものの、飛び出すタイミングを逃してとりあえず様子を見ていたのだ。
というより、か弱さの欠片もなく戦う姿を雄二に見られたくなかったから隠れていたというのが一番の理由だったりもするが。
「あっあの、これはね……その、灯乃ちゃんが勉強会の約束をしてたっていうから……」
「だから何だ?」
「うっ……ごめんなさい」
斗真の睨みに、春明は縮こまって俯いた。
そんな彼を尻目に斗真は再び雄二の方を向くと、厳しい口調で話し出す。
「とにかく関係ない者は二度と来るな。迷惑だ」
「なんだとっ!」
雄二がムッとして拳を握り締めるが、斗真は気にとめることもしないで、灯乃を抱えたまま家の中へと歩く。
「えっちょっちょっと!?」
「お前は来い、灯乃。……話がある」
「え?」
「おい、待てよ」
雄二が納得いかないと言わんばかりに斗真の足を止める。
「灯乃だって関係ねぇだろ。そいつ、どうするつもりだ?」
「それこそお前に関係ない」
「てめぇ……っ!」
斗真の発言になおさら不満を募らせ、雄二は彼に食い下がり、怒りを露にした。
その様子に、斗真は側の春明に眼を向ける。
「春明、命令だ――そいつを追い出せ、二度とここへ近づけさせるな」
「……御意」
「は?命令?」
斗真が放つ命令に雄二が困惑していると、その彼の腕を春明が掴んだ。
そして斗真が中へと入っていく間、春明に掴まれた手によって雄二はきつく抑え込まれた。
鍛えている筈の雄二でも振り解けない強い力。びっくりして春明を見る。
「春明、さん……?」
「ごめんなさい。本当に、ごめんなさい」
その後、結局雄二は追い出されて、春明に送られながら帰路につく。
勉強も一切しないまま、ただ部外者呼ばわりされたことと灯乃がいないことへの苛々する気持ちを抱えて、彼は春明を睨んだ。
「なんで止めたんだ? あいつ、そんなに偉いのかよ?」
「……」
「灯乃をどうするつもりだ? まさか何かに巻き込むつもりじゃねぇだろうな?」
「……」
雄二は立ち止まって、春明の両肩を抑えるように掴む。
春明は無言のまま居た堪れない表情で外方を向くが、それを覗き込むように雄二は視線を向けた。
「春明さん、アンタがなんであの野郎の言いなりになるのかは知らねぇ。けど、灯乃には何の関係もねぇだろ? だいたいあいつのおばさんは何て言ってんだよ?」
「何も知らないわ。ご家族には友達の家に泊まるとしか連絡してないから」
春明がそう呟くと、次の瞬間、雄二の表情が驚愕に歪んだ。というより、してはいけないことをしてしまったような、そんな絶句する顔。
「……雄二くん?」
「まさか、おばさんのこと何も知らないのか?」
「え……?」
彼の言葉の意味が理解できず、春明はそのまま立ち尽くした。
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