第2話 事件勃発

「今日さ、上井と一緒に音楽室に来たのはなんで?」


 北村先輩がアタシに聞いた。


 北村先輩は、吹奏楽部の部長で、アタシの彼氏💖


 去年の文化祭後に北村先輩が部長になった後、告白されたの。


 アタシの初めての彼だけど、どうも周りからは、あんな男止めとけ❗って言われるの。


 今のところ、別に不満もないけど…


 かと言って、これが中学生のカップルのお付き合いで良いのかな?と思わないでもなくってね〜🤔


 休みの日に何処か一緒に出掛ける訳じゃないし、たまに交換日記みたいなことするのと、部活後に一緒に帰るだけだし…。


 不満はないけど、満足してる訳でもないんだよ。


「上井くん?同じクラスになったし、まだ入ったばかりだから、少しでも音楽室に来やすいように、暫く一緒に来てあげようかなって」


「そんなことせんでもええのに」


「えっ?」


 アタシはまさか北村先輩がそんなこと言うとは思わなくて、びっくりしちゃった。

 きっと、上井くんが慣れるまで助けてやってくれ、とか言うと思ってたんだけど…。


「そんなことしたら、他の生徒から、お前と上井が付き合ってると思われる。俺は嫌だ」


「でも…」


「大丈夫だよ。上井は去年新聞部で、俺の同期から酷い目に遭わされたのは先生からも聞いたし、俺も知ってる。だから俺もイザという時は上井を守ってやるよ。だけど、一緒に部活に来るのは、ちょっと困るし、止めてほしい」


「・・・」


 そんな会話から始まった今日の部活だから、アタシはなんか気が重くてね…。


 親友のチカちゃんが心配して、声を掛けてくれた。


「ねえねえケイちゃん、元気ないよ?どうしたの?」


「あっ、うん。なんでもないよ」


「なんでもないようには見えんかったよ。悩みがあるなら、アタシが相談に乗るよ。いつもケイちゃんに助けてもらってるし」


「…ありがとうね。簡単に言うと、北村先輩は意外と嫉妬するタイプなのが分かった…って所かな」


 チカちゃんはその言葉で全てを分かったみたい。流石、本当は私立の進学校に行ってもいいだけの頭の良さを持つ女の子だなぁ。アタシとは天と地の差だよ、トホホ。


「上井くんは、アタシもちょっと気になってたの。アタシも存在を知ってるだけだったけど、2年生から途中入部する勇気なんて、なかなかないよね。でも部活に来ても同期の男の子はいないし、まだ北村先輩とは打ち解けてないし、1年の男の子も自分の事で精一杯だし、サックスの先輩からは厳し目に指導されてるし。上井くん、すぐ辞めちゃうんじゃないかと思ってさ…」


「でしょ!?だからアタシ、上井くんと同じクラスになったから、せっかく吹奏楽部に入ってくれたのに、辞めたいみたいなこと言ってたから、引き止めなきゃと思って、一緒に音楽室に行こうって誘ったの。そしたら北村先輩は彼氏でもないのにそんなことするな、って…」


「北村先輩がそう言ったんだね。確かにケイちゃんが、他の男子と2人きりで歩いてるのを見るのは嫌かもしれないけど、同じ吹奏楽部じゃん!ケイちゃんは上井くんのために気を使っただけなのにね。…実はアタシ、ちょっと北村先輩が苦手なの。ケイちゃんだけにしか言わないから、2人だけの秘密だよ」


 チカちゃんはそう言ってくれた。


 アタシも北村先輩に告白されて、嬉しくて付き合ったんだけど、ちょっと嫉妬深い所を見て、この先不安になっちゃった。


 一つ上の先輩方も、人数が5人しかいなくて少ないのに、あまり仲が良くないし…。


 でもアタシはアタシの考えがあるもん。


 楽しい吹奏楽部にしたいし、上井くんも絶対に退部させないように頑張る!


 @@@@@@@@@@@@@@@


 遂に夏のコンクールを迎えたよ♪


 上井くんも苦しみながら、男子の後輩とも仲良くなって、居場所が出来たみたいなの。


 アタシも北村先輩がいない時を見計らって、上井くんに声を掛けてたんだ。


 あと同じクラスっていうのは大きいね!


 実は5月に、修学旅行があったの。


 その時の移動中、結構お話しする機会があって、上井くんの考えとか、アタシの考えとか、話せたの。

 北村先輩のことも、彼女として、本音はこうなんだよ…ってオブラートに包んで伝えて上げたよ。


「…だから、北村先輩は上井くんに凄い期待してるんだよ」


「でもさ、サックスの先輩とは仲良く喋れるようになったけど、北村先輩とは仲良く喋れないし、呼ばれたら緊張するし」


「それもなんだけど、『俺はどうしても怒鳴られて叱られて、その中から這い上がって来たから、つい同じように接してしまう、だけど上井しか吹奏楽部の後を託せる男はおらんから、頑張ってほしいんだ』って、この前言ってたよ。まあ先輩の彼女として考えると、言葉と態度は裏腹ね、って感じかな〜なーんてねっ!」


「じゃあ山神さんの言葉を信じて、頑張るから。見ててね、これからの俺を」


 やっぱりアタシの彼氏と、同じクラスメイトには仲良くしてほしいしね。


 っていうような会話を、3日目のホテルのロビーで出会った時に2人だけで話したんだけど、そんな光景見たら北村先輩はまた嫉妬するかもね(;´∀`)


 放課後一緒に音楽室に向かうのは、残念ながら北村先輩の横槍で止めたけど、でも上井くんはアタシが北村先輩と付き合ってるのを知らなかったらしくて、それなら俺と2人で一緒に音楽室に行くなんてしちゃあいけんよ!と言ってくれたから、良かったような…。


 あとね、多分なんだけど、やっぱり上井くんはウブな男の子だと思うの(*´艸`*)


 理科の授業の時に、アタシの班と、上井くんの班が隣合ったことがあるの。

 その時に、偶々上井くんの背中とアタシの背中がくっ付いたの(。>﹏<。)


 上井くんたら、慌てて背中を仰け反らせて、


「ご、ごめん!そんなつもりじゃなくて、あの、ごめんね!」


 だって(^_^;)


 そんなつもりってな〜に?って、ちょっとからかったら、ますます顔を真っ赤にしてごめんね、ごめんねって繰り返すから、ちょっと可哀想になったから止めたけどね(;´∀`)


 上井くんとお話しすると、北村先輩とは同じ男子でも、全然違うのね、って思うわ。


 そんな上井くん、コンクールで演奏する曲で、一小節だけなんだけど、たった一人で吹くソロの部分があるの♫


 夏休みの練習中に、その部分を吹いた時に、先生がわざとそこで止めて、


「聴いたか、今のバリサクのソロ。とてもバリサク始めて4ヶ月とは思えんの〜。上井!いつの間に上手くなったんや?」


 って、わざと褒めたの。


 これは竹吉先生ならではの、作戦かな?って思ったよ🎷


 その時も上井くん、凄い照れてたけど、その日からやる気がそれまでとは全然違うようになったしね୧(^ 〰 ^)୨


 で、夏のコンクールは、なんとゴールド金賞だったんだよ〜(☆▽☆)


 竹吉先生も嬉しかったし、アタシ達も嬉しかったし、気になる上井くんも何かよく分からんけど、って感じでハイテンションになってる(。•̀ᴗ-)✧


 もう上井くん、吹奏楽部を辞めたいとか、言わないよね、きっと( ꈍᴗꈍ)


 @@@@@@@@@@@@@@@


 2学期になって、体育祭の演奏が終わって、次は文化祭!って時に、ちょっとした事件が起きちゃった…。


 ある日練習に向かったら、チカちゃんが泣きながら下駄箱へ走って行くのを見掛けたの。


 何があったのかな?と思って音楽室に入ったら、上井くんが一人だけ。


「上井くん!神戸さんに何かしたの?」


 って、ちょっと強目に聞いちゃったんだ。


「えっ?俺も知らないよ!」


 上井くんが言うには、音楽室に着く寸前に、北村部長が半笑いしながら飛び出してきて、何があったんだ?と音楽室に入ったら、チカちゃんが体育座りで泣いてたんだって。


 で、上井くんが声を掛けてみたけど、チカちゃんは大丈夫!とだけ言って、だけど荷物を持って泣きながら音楽室から飛び出して行った、そういう展開なんだって。


「だからさぁ、ここは親友のよしみで、今晩でも神戸さんに電話して、様子を聞いてみてくれない?」


「えっ、アタシが?」


「どうも状況的に、北村先輩が神戸さんに傷付くことを言ったんじゃないかなと、思うんだよね。そんな時は、やっぱり彼女の出番でしょ?」


「えーっ、都合の良い時だけ、アタシを先輩の彼女として扱ってない?上井くんがチカちゃんに電話すればいいじゃん」


「…そっ、そんなこと、出来ないってば!クラスが違うから、電話番号も知らないし」


「それを言ったら、アタシだってチカちゃんもクラスは違うけどね〜」


「とにかく、神戸さんには元気になってほしくて…。ねぇ、頼むよ!御礼するからさ」


「そこまで言われちゃ、女がすたるね、なーんてね。うん、分かったよ。今夜電話してみるよ。明日、結果を教えてあげる」


「ありがとう〜!」


「でも、そんなにチカちゃんのことに一生懸命になるのは、もしかして上井くん、チカちゃんのことが…好き?」


 もう上井くんは分かりやすいから、顔を途端に真っ赤にしながら、


「ちっ、違うよ!違うって!純粋に、女の子が泣いてしまうなんて、よっぼのことじゃん?だからさ、あの、その…」


 …そっか、上井くん、チカちゃんのことが気になるんだね。

 分かったよ、上井くん。アタシ頑張るからね。


 <次回へ続く>

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