第三話
「グヘヘヘ……姫の命、もらい受けたぞ!」
突然、茂みから数人、全身を棘の鎧を身にまとった者達が現れる。私は目を見張る。
「う、うそ……。どうして」
彼らはここ、王城に入れるはずのない、深海の水族たちだった。
「ほぉ、俺たちのことを知っているとは嬉しいねぇ」
一人のリーダー格のような身体が一際大きい者が薄笑みを浮かべながら、じろじろと私を見下ろす。その視線から守るように目の前にオルカの背中が立ち塞がった。
「貴様ら、自ら首を取られに来たか」
「ゲヘヘ。なぁんだー? てめぇは」
「貴様らに教えるまでもない」
言うが早いか、オルカは手前にいた者へと斬りかかる。そのまま横へ、剣が流れるように動いた。
「
剣の動きと共に相手のうめき声が一人、二人――――。
私は初めて、オルカの戦う姿を目にし、唖然とする。動きが水のように流れていて、どうなっているのか見えない。
「セイラ様、今のうちに避難しましょう」
侍女の声に我に返り、うなずく。城の方へ踵を返そうとした時、不意に背後に何か気配を感じた。
「セイラっ!!」
オルカの声に振り返ると同時に、目の前が真っ暗になる。
「くっ……」
じわりと生温かいものが、私の腕に伝わる。それが血だと認識するのにそう時間はかからなかった。そして、自分がオルカに抱きかかえられていることに気付く。
「お、オルカっ!! ち、血が……!」
「大丈夫だ。それより怪我はないか?」
「え、ええ。私は大丈夫よ」
オルカの左腕には数本の棘が刺さっていた。すぐさま、私を地面に降ろし、背後に庇いながらオルカは剣を握っている右腕を振り上げ、地面に一直線に突き刺す。
「
すると、四方八方に水柱が鋭い針のように噴き上がり、周辺にいた敵を一気に倒した。私は呆気に取られながら、オルカを見つめる。彼の底無しの強さを目の当たりにして、頭が真っ白になる。
「セイラ?」
いつの間にか剣をしまったオルカが心配そうに顔を覗き込む。その声に我に返り、慌ててオルカの怪我している腕に自分の持っていたハンカチを充てる。
「オルカ、助けてくれてありがとう。急いで手当てをしないと」
「これくらい平気だ。自分で」
「だめっ。服も汚れてしまっているし、体も清めた方がいいわ。部屋に戻りましょう」
「い、いや! それは」
何故か抵抗するオルカに有無も言わさずに、私は風呂場へ向かった。
侍女たちに風呂の用意をさせている間に、私はオルカの傷の具合を確認する。
「棘の刺さりは浅いわね……。抜くわよ?」
「いや、自分でやる」
オルカは私の手を押し退け、時折、顔をしかめながら自分で棘を全て抜いてしまう。私は、血が溢れてくるのを同時に止血していく。先程、庭で摘んでおいた薬草を傷口に充てる。蔓できつく縛り終えると侍女達が姿を現した。
「セイラ様、お風呂の準備が整いました」
「ありがとう。下がっていいわ」
私の言葉に侍女たちは頭を下げ、部屋を出ていく。
「さ、オルカ。服を脱ぐのを手伝うわ」
「ま、待てっ! そこまでしなくても」
「いいのよ、遠慮しなくて。ほらっ」
オルカが着ているシャツのボタンを下から一つずつ開けていく。そして、綺麗な肉体美が顕となった。筋肉質な体につい、私は見とれてしまう。
だが、何か違和感を覚える。
「……ねぇ、オルカ。あなた――――」
「……」
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