第289話 289.【間話】ラドス城塞都市の大混乱

◇◇ルイス・ラドス枢機卿◇◇


突然私の所に塩田の中に他国の密偵が侵入して来たという報告が南の塩田地帯の部隊長より報告が上がって来た。

今までに起こった事の無い事態でビックリだ。

普通の人間には海の水から塩を製造するなんていう事は考えもしないだろう。

たとえやったとしてもあの海の水を窯で煮立としても数グラムの塩が残るだけ

あの塩田にその謎が隠されていると狙いを付けたのは流石だ


何処の城塞都市の密偵だ?

塩田に秘密が有ると思った事は誉めてやろうじゃ無いか

捕らえて、何処の密偵か吐かせてその城塞都市を殲滅してやろうじゃないか!!



侵入者は塩田から北西の方向に逃げたと言う。

あの兵士達でも追いつけないとは逃げ足の速い奴だ

早速ラドス全域に警戒態勢を敷いて、侵入者と思しき者を見つけたら捕らえろと指示を出した。

このラドス城塞都市を舐めるなよ!!


侵入者は絶対に捕らえてやる!!

侵入者は奇抜な服を着ていたという。目立つ服だったそうだから直ぐに捕まるだろう


・・・


・・・



・・・

あれから1時間が経ったがまだ侵入者は捕まらない。

どういう事だ!!

頭に血の登った茹蛸のようの真っ赤になった顔をさらに真っ赤に染め

「神聖騎士団長のユージーン・ジャイルズは居らんか?居たらすぐに私の所に来い」


ルイス・ラドスはラドス聖ドニアス教会本部の中で大声で叫んだのだった。


ルイス・ラドス枢機卿が茹蛸のように顔を真っ赤に染めて激怒していると聞いた神聖騎士団長のユージーン・ジャイルズは重い鎧を着こんだ体に鞭打って


『ガシャガシャ』


と音を立てながら息を切らして

「神聖騎士団長のユージーン・ジャイルズ只今参上致しました」

はぁはぁ~と息切れしながら報告するユージーン・ジャイルズに

「あれから1時間も経っているのだぞ!!まだ侵入した密偵が捕まらないとはユージーン・ジャイルズどういう事だ!!」


ルイス・ラドス枢機卿が茹蛸のように顔を真っ赤に染め話す度に唾がユージーン・ジャイルズの顔に当たるのを我慢しながら


「只今、神聖騎士団員全員をラドスの街中に出し密偵を捜索中です。また神官達も総出で街中に出させて密偵を全力で探させております。今しばらくお待ちくださいませ」

そう言って噴き出す汗とルイス・ラドス枢機卿が喋るたびにユージーン・ジャイルズの顔に吐きつけた唾をハンカチで拭いながら何とか言い訳をするのだった。


ルイス・ラドス枢機卿


生まれながらにラドス聖ドニアス協会枢機卿の座を約束された人物

それゆえにルイス・ラドスに口答えする物は1人も居なかった



・・・


・・・


それから10分後事態は急転する。


突然ラドス城塞都市聖ドニアス協会本部の神殿から南東の方向に約4キロ程離れた所で周囲2キロの範囲に業火に包まれたエリアが出現

物凄い火の勢いに唖然と見ている事しか出来なかったルイス・ラドス枢機卿


丘の上に立つ聖ドニアス協会の神殿から4キロ離れた場所に突然現れた業火に包まれた場所を眺めながら

「何故だ!!何故なんだ!!ラドス城塞都市の中で誰が『断罪の魔道具』を使ったんだ!!

あれはラドス城塞都市の中で使って良い物じゃ無い!!

誰だ『断罪の魔道具』をラドス城塞都市の中で使った奴は~~~!!」


神聖騎士団長のユージーン・ジャイルズはルイス・ラドス枢機卿の言葉に

「『断罪の魔道具』を使ったのは多分神聖騎士副団長のドルー・マクレナンでございましょう。ラドス城塞都市に害意を向けるものだけを断罪の業火で焼き尽くす魔道具でございましょ?あの業火の中でもラドスに住む領民にはなんの危害も与えてはいないハズでございます」


ルイス・ラドス枢機卿は神聖騎士団長のユージーン・ジャイルズのその言葉に何も言えなかったのであった。

嘘を嘘で塗り固め真実として広めた結果ラドス城塞都市住民であっても何が真実なのか解らなくなってしまったのである。


『断罪の魔道具』として渡した魔道具は他の城塞都市で使われる想定で渡した魔道具

殆どの城塞都市は中枢部でこの『断罪の魔道具』を使えば確実に壊滅的な打撃を与えられ敵対勢力を葬って来る事が出来た。

証拠は残らない

使った者も同時に消滅してしまうのだから!!

こうやってラドスは敵対勢力の城塞都市を葬って来たのだった。


だが・・今回はラドス城塞都市内部に密偵が入り込み、それを殲滅する為に『断罪の魔道具』を神聖騎士副団長のドルー・マクレナンが使った。

想定外の事態である

幸運だったのは、ラドス中枢部で『断罪の魔道具』が使われなかった事だ


もしも


この神殿の近くで『断罪の魔道具』を使われていたら・・・


それを思うと体が震えて来るルイス・ラドス枢機卿であった。


つづく・・・

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