第193話 193.ダナン城塞都市消滅

◇◇城塞都市トレノアの領主ジョージ・アディソン◇◇


レイラとダナン救出組の58人がレイアードの魔獣討伐から帰って来た日、城塞都市トレノアの正門にはボロボロになったトレノアの兵士413人がやっとの思いで帰って来た。

それを見た門番が

「こ・・これはどうしたんだ!!」

とびっくりして聞くと

「ダナンの城塞都市が奪還されているのを知らなかった俺達は奇襲を受け、なんとかこれだけの兵が生き延びたんだ。至急領主様に連絡してくれ」

「解った!!後は任せろ!!だが1人は領主様に報告しなきゃならん。誰か俺と一緒に来てくれ」

「じゃ~俺が行こう」


そう言って門番の1人と、最初に話した生き残りの兵士が馬で領主館へと向かったのだった。



領主館で報告を受けた城塞都市トレノアの領主ジョージは

「なに~~ダナンの城塞都市が奪還されただと~~~許さん!!ダナンの城塞内にいたトレノアの兵2000と今回送った兵の600人近くを殺されたんだ!!ダナンの奴ら思い知るがいい


ヘッドリー!!ヘッドリーは居らんか~~~」


激怒し家令のヘッドリーを大声で呼ぶのだった。

「ヘッドリー只今参りました」

「ヘッドリー直ちに、ダンジョンから持ち帰った『悪魔の雫』を全樽用意しろ!!今晩ダナンの城塞都市を夜襲し全滅させてやる」


「ははっ直ちに準備させまする」

家令のヘッドリーはすぐさま領主館の中に走り去り兵士達に馬車とダンジョン5階層から持ち帰った『悪魔の雫』の入った樽を全樽倉庫の中から運び出させたのだった。


『悪魔の雫』はトランのダンジョン5階層の沼に溜まった真っ黒なドロドロの何とも言えない異臭のする液体でダンジョン5階層で野営をしようと薪に火を付けた瞬間ダンジョン5階層の沼に燃え移って冒険者は大変な目に遭った事で別名『燃える黒水』とも言われている。

ダンジョンに潜る冒険者達に臭くて燃える厄介なだけの物だつたが・・


それを聞いた領主ジョージが

『戦闘に仕えるかもしれん』

と言って集めさせたものだった。


その夜・・

トレノアの城主ジョージは自ら2000の兵を率いて馬車50台に積んだ『悪魔の雫』を運んで行くのだった。



◇◇ドンデリアル商会会頭ドランスフィールド・ドンデリアル◇◇


昼間ダナンの城塞都市奪還を何も知らないままダナンの城塞都市に来たトレノアの1000人の兵を奇襲で退けたドンデリアル商会会頭ドランスフィールド達とダナンに残った人達はダンジョンに潜り早速オーク肉を調達してきたオークの肉を焼き、酒を飲みながら盛大な宴会を行っていた。


「皆、昼間はお疲れだった!!お陰でトレノアのバカな兵達を退ける事が出来た。みんな飲め~飲め!!そして大いに騒ごうではないか!!」


「「「「「「「「「「おおおおおおおおおおお~」」」」」」」」」」

「トレノアの奴らの必死で逃げてゆく姿は面白かったな」

「あの必死で逃げてゆく姿は、今思い出しても笑えるぜ」

・・・・

・・・・

そうして大酒を飲みあい、昼間の疲れが出たダナンの人々は眠りにつくのだつた・・・







◇◇トレノア軍 深夜◇◇



月も無い真っ暗な中を2000の兵はダナンの街の人々が寝静まるのを待っていた

見張りの合図と共にダナンの城塞内に入った兵士達が音を立てないようにダナンの正門の扉を開け50台もの馬車一杯に乗せられた『悪魔の雫』の樽をダナンの城塞都市の中に運び入れてゆく。


「音を立てるなよ」

「ハイ」

2000人の兵士が『悪魔の雫』の入った樽を置き『悪魔の雫』に付け込んだ縄を繋いでゆく

そうして50台の馬車に積んだ『悪魔の雫』の入った樽を全部降ろし終えると半分の樽の中身を家々に振り撒きトレノアの兵士達はダナンの城塞都市の中からから撤収



そうしてトレノアの領主ジョージの


「ヤレ!!」


っという短い言葉に一斉に火矢をダナンの城塞都市の中に射ったのだった。


火矢が落ちた場所からばら撒いた『悪魔の雫』の液体に引火

一気に燃え上がり町中が火に包まれてゆく


勝利に祝杯をあげ大酒を飲み泥酔していたダナンの住人は誰一人起きる事なく、気づいた時には火に包まれてゆくのだった。


もしもダナンの人間が危機感を持って


『襲撃が有るかも!!』


とダナンの城塞都市の警備を交代でしていれば、あるいはこの夜襲を切り抜け逆襲出来ていたのかもしれない。

だが・・

かもしれない現実は起きなかった。


この日、ダナンの城塞都市は完全に滅んだのだった。


つづく・・・

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