第121話 121.トレノア城塞都市領主館

<アネルド商会の会頭のレオン・アネルド>


トレノアの領主館はトレノア助祭都市の正門から真っすぐに伸びる大通りをそのまま進んだ先に有る。

アネルド商会本店からは目と鼻の先

領主館の有る場所は街の建物のある場所よりも少し小高い丘の上に立っていて丘の周りはロータリー状に円形に道が領主館の周りをまわっている。

そんな少し坂になった領主館の建つ丘の坂道を俺の乗った馬車は一気に駆け上がる

馬車が付くと同時に領主館の昔からの顔なじみの執事ドルフが


「レオン様ようこそおいで下さいました。領主であるジョージ様が突然のご連絡でビックリしております。執務室でお待ちしておりますのでご案内致します」


「こちらも想定外の事が起こった為に、急遽戻って来た次第です。至急お会いして報告したい、案内してくれるか」

「承知いたしました」

そう言って執事のドルフが勝手知ったる館の中だが先頭に立って執務室へと案内してくれる。


執務七の前に来ると執事のドルフが

「アネルド商会のレオン様をお連れしました」

と声を掛けると

「入れ」

その言葉に執事のドルフがドアを開けてくれ、俺は執務室に入って行く。

胃が痛い・・

帰りたい気分だが我慢だ!!


トレノアの領主ジョージが

「まぁ座ってくれ、直ぐに茶の用意をさせよう」

そう言ってくれたので、俺がジョージの対面に座ると

「ドルフ直ぐに紅茶の準備をしてくれ」

「承知しました」

と言ってドアを閉めて出て行った。


「予定では帰って来るのは2週間後の予定だったハズだがどうしたのだ」

「実は城塞都市レイアードに行く途中の『悪魔の森』の辺りで100人を超える『黒森砦』の赤髭のゼクト盗賊団に襲われアネルド商会の使用人15人と護衛で雇った冒険者29人が亡くなりました」

「何と『黒森砦』の赤髭のゼクト盗賊団に襲われたのか・・クソ!!赤髭のゼクトの奴め~~してオークションへ出す為の奴隷も全滅か?」


「いえ、現在『悪魔の森』付近を治めるエデンという領地が出来てまして、そこの領主様が『黒森砦』と赤髭のゼクト盗賊団すべてを殲滅し私達を助けて頂いたのです。そうして死にかけていた20人のアネルド商会の使用人と護衛をこの薬で助けて頂きました」


と言って俺は4本のポーションを懐から取り出し机の上に置く。


「これは?」

「幻の薬エリクサーでございます。この4本で金貨1000万枚です。金貨1000万枚もの金額は持っておりませんでしたので、領民を探しているという私達を助けて頂いたエデンの領主様と交渉し奴隷50人と交換という事にして頂きました。

勝手な事をして申し訳ございません。

この薬は私の千切れた足も腕も一瞬で再生させた優れものでございます。

この薬があれば領主様の無くなった足も即時に再生する事が出来るでしょう。

それに長男様の難病もこれを飲ませれば即時に治るはずでございます。

なにせこの薬は幻のエリクサーなのですから!!

これを手に入れた私達は幸運でした。ご領主様の亡くした足を再生し、懸案であったご長男様の難病を治す為ダンジョン攻略をしてエリクサーを手に入れなくても良くなったのです!!」


「一刻も早くこの薬を我々に届ける為にそれでこんなにも早く帰って来たと言う事か?」

「はいさようでございます」


領主ジョージは机の上に置かれたポーションを1本取りあげて

「これを飲めば俺の足は再生するのか?信じれぬ!!この世界にそんな再生能力のある薬が存在するなど聞いた事も無いぞ。あのエリクサーの話はお釈迦の夢物語と儂は思っておったくらいだ・・儂が飲んで良いのだな?」


「ハイご自分でご確認するのが一番納得が出来るでしょう」

おれがそう言うとポーションの線を抜いて一気にポーションを


『ゴクッ』


『ゴクッ』



っと飲み込む領主のジョージ

その瞬間


「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお~」

「足が~~」

「足が焼けるように熱いぞ~~何だ此れは!!」

「儂の体に何が起こっておるのだ!!」

「おお~~儂の足が!!」

「儂の足が再生しておる!!凄いぞこれは!!奇跡の薬じゃ~でかしたレオン!!」


ふぅ~なんとか誤魔化せたようで良かった!!

俺達は魔獣のスタンピードにあって壊滅しかけたが、話を『黒森砦』の赤髭のゼクトの襲撃にしておいて良かった

確かに『黒森砦』の赤髭のゼクトが100人以上の山賊を連れて襲って来たのは事実だからな!!

『黒森砦』の赤髭のゼクトが襲って来た場所に俺達の商隊も居た訳だから、襲われたのは嘘では無い!!


「凄いぞ!!儂の亡くした足が元取り再生して以前のように自由に動けるぞ!!よし!!長男のマイクもこの薬で今すぐに治してやるぞ。このまま少しの間まっていてくれ」


領主のジョージはそう言うなり、机の上のポーションを一本握り締めた瞬間部屋から速攻で走り去った。

暫くして・・


「お父様~・・・・」

「おおおおおおおおおおおお~・・・・」


という感動の声が聞こえて来た

何とか無事にあのポーションが効いて長男のマイクの難病も完治したようだな

ああ~これで帰れるぞ!!


このクソ忌まわしい領主の館を出て、早くレイ殿達に報告せねば・・


つづく・・・

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