-50- 「財布」

 学校からの帰り道、道端に財布が落ちていた。


 ランドセルにつけたお守りから、蛇が出て来てしゃーっと威嚇した。


 あれは危ないモノらしい、触るときっと良くない。


 でも、道に落ちたままだと、その内誰かが拾うだろう。


 僕は手に持っていた傘をゴルフの要領で、クラブの様にスイングして財布を殴り飛ばす。


 傘の柄で殴った瞬間、財布からぐぇっと悲鳴の様なものが聞こえた様な気がした。


 傘をそのまま振り抜いて、遠くへ弾き飛ばそうとしたけれど、財布から何か長いモノが伸びて、傘に巻き付いて離れない。


 舌、の様に思えた。


 今度は野球の要領で、傘をバットの様に思い切りスイングし、財布を振り解いた。


 財布は吹っ飛んで、道の横を流れるドブ川に落ちて行った。


 川のそばに駆け寄ると、財布が落ちた辺りの水面に、ぶくぶくと泡が立っていた。


 けれど、暫く見ていると、やがてその泡も見えなくなった。


 手で触っていたら、と思うと、ゾッとする。


 朝、雨が降っていて、本当に助かった。

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