-48- 「心霊カメラ」
一角堂に遊びに行くと、お兄さんが古いカメラを見せてくれた。
「このカメラはね、インスタントカメラと言って、撮った写真をその場で見れる、優れ物なんですよ」
そう言って、パシャリと店内を適当に撮影すると、すぐにカメラから写真が出て来た。
最初は何も写っていなかったけれど、暫く見守っていると、店内の風景が浮かんで来た。
端っこに、僕の頭が上の方だけ写っている。
よく見ると、店の奥にある商品棚を、小さな女の子が覗いている。
「このカメラ、高齢のご婦人から譲り受けたのですがね。亡くなった旦那さんが若い頃、小さかった娘さんをよく撮っていた、思い出の品だそうです」
後ろを振り返って見たけれど、誰もいない。
「ご自分では手入れ出来ず、大切にしてくれる人を見付けて欲しいと、無償で提供して下さいました」
お兄さんの説明を聞きながら、僕はカウンターに置かれたカメラのレンズを覗き込んだ。
すると、カメラが突然眩しく光り、パシャリと音がした。
え、と驚くお兄さんをよそに、カメラは一枚の写真を吐き出した。
暫く待つと、それは、レンズを覗き込む僕と、同じ様にレンズを覗き込む、笑顔の女の子が写った写真だった。
先程の話に出た、娘さんだろうか。
「いや、その娘さんはすっかり成長して、大きなお子さんもいるそうです。お宅にお邪魔した時には、お茶を出して下さいましたよ」
じゃあ、幽霊が写真に写ったんじゃなくて、このカメラが自分の意思で、写したいモノを写したのかも知れない。
「このカメラが生きてるって事ですかい。いずれにしろ、尋常ではありませんや」
よく分からないけれど、この写真はそれ程悪いモノではないと思う。
この写真は処分します、とお兄さんは写真を握り潰そうとしたので、僕は慌てて止めた。
その写真は、貰って帰る事にした。
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