-43- 「ノック」

 僕と悠太の部屋の扉は、時々、誰かがノックする。


 扉は木製で、コンコン、と小気味の良い音だ。


 部屋の中にいる時は外から、外にいる時は中から、誰かがノックするのだけれど、すぐに扉を開けても誰もいない。


 夏のある日、暑かったので扉を開けておいたら、それでもノックの音が聞こえた。


 すぐに扉に目を向けるけど、扉は開いていて、部屋の外にも中にもノックの主は見当たらない。


 僕が首を捻っていると、一緒にいた悠太が言った。


「お兄ちゃん。僕、見てたけど、扉をノックした人は誰も居なかったよ。勝手に扉が鳴った……多分、扉の木の内側から音が聞こえたんだよ」


 ノックの主は、扉の中に居るんだろうか。

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