-30- 「田中家の掟2」

 田中君の家の庭で遊んでいた時、古い金属製の物置の壁に穴が空いていて、何故かコルク栓が嵌められていた。


 コルク栓を壁から外してみると、穴から、ぎょろりとした目がこちらを覗いた。


 何これ、と田中君に聞いてみた。


「ああ、俺ん家の掟の一つだ。壁に穴が空いたら、急いで塞がなきゃいけない」


 へー、と答えながら、穴から覗く目玉を、落ちていた木の枝で突いてみた。


 目玉は一瞬逃げる様に見えなくなったけど、バキ、と音を立てて枝の先が折られ、再び目玉がこちらを覗いた。


 僕は穴に、コルク栓を嵌め直した。

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