-27- 「闇妖精」
夜、眠っていると、隣で寝ていた悠太に揺り起こされた。
「お兄ちゃん、一緒に寝よ」
そう言って、枕を持って僕の布団に入ってきた。
布団を目深にかぶってぎゅっと目を瞑り、耳を両手で塞いでいる。
何かまた、怖いイキモノでも出たのかな、と耳を澄ますと、闇の中で、くすくすと言う微かな笑い声が響いている。
部屋の中を、何かが飛び回っているのが、ぼんやり光って見える。
人型で翅の生えた小さなイキモノが、何匹か僕達の頭上で飛び回っている。
屋内の暗い場所でよく見かける、童話に出てくる妖精の様なイキモノだ。
僕は人差し指を口に当てて、しー、とそいつ等に言った。
するとそいつ等も僕の真似をして、しー、と言って静かになった。
こいつ等は子ども好きで、赤ちゃんの周りで飛び回ってあやしている、怖くないイキモノだ。
赤ちゃんは皆こいつ等が見えるけれど、悠太の年で見える子は少ないから、珍しかったんだろう。
「悠太、大丈夫だよ。怖い奴等じゃないから」
頭を撫でると、悠太は耳を塞ぐのを止めた。
まだ頭上を飛び回っている気配がするけれど、それだけだ。
暫くして、悠太の寝息を確認してから、僕も眠りについた。
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