-26- 「水道金魚」

 お風呂を入れる為に浴槽を洗い、お湯を溜めた浴槽に水を入れて温めていると、蛇口のホースから、水に混じって何か小さなモノが湯船に吐き出された。


 イキモノだ。


 湯船の中をちょろちょろと、十匹位元気に泳ぎ回っている。


 顔を近付けてよく見ると、それは金魚だった。


 赤いくて小さいのや、黒い出目金等、夜店で見かける普通の金魚だ。


 けれど、普通の金魚が、水道から出て来たり、まだ熱いお風呂の中で生きられるものなのだろうか。


 僕は、どうすれば良いのか訳が分からず、手に持っていたお風呂を掻き混ぜる棒を湯船に突っ込み、じゃぶじゃぶと掻き回した。


 すると、金魚達は湯船の中をグルグルと逃げ回り、蛇口のホースの中へと次々逃げ込み、居なくなった。


 金魚は居なくなったけれど、湯船のお湯に入る気にはならず、浴槽を洗ってお湯を入れ直した。


 お母さんと悠太には、排水溝の栓がきちんと嵌っていなかったと言い訳し、怒られておいた。

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