18.彼女はぼくの想像を超えていく

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狩猟小屋でふたりきりになったシャーロットとジョイス。

くすぶっていた思いは、彼女の意外な行動でまたたく間に燃え上がって――。


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「あっ……!」

 ジョイスに腕を引かれた勢いで、シャーロットの肩から毛布が落ちた。

 彼女ははっとして、とっさに離れようとした。シュミーズだけになったら、肩も腕もむき出しになってしまう。そうしたら、肩の傷が……!

 だが、ジョイスは離さなかった。そして、初めて、彼女の左肩を目にした。

「それは――?」ジョイスが目を見開く。

 シャーロットはあわてて右手で左肩を押さえた。

 見られた! 見られてしまった。ジョイスに……!

「これは……これは……昔、こわいことがあって……それで……」口がもつれる。なにを言えばいいのかわからない。ジョイスの顔が見られない。

 ジョイスはそっと彼女の手に手を重ね、落ちた毛布をもう片方の手で拾って彼女の両肩にかけてやった。

「無理に話さなくていい。まったく気にすることはない」彼は毛布の上から彼女の両肩を押さえた。「ぼくの傷を見ただろう? 比べるようなものでもないが、ぼくのこんな体に比べたら――ほら」ジョイスはボタンを三つはずしたシャツの襟元をぐいとはだけ、むごい傷痕をさらした。

 最初に彼に会った日、採寸のときに、シャーロットはその傷痕を見た。大きく肉がえぐれ、ただれてしまった、なまなましい傷痕。

 でも、最初こそ驚いたが、おそろしいとはまったく思わなかった。

 傷があっても、なくても、ジョイスはジョイスでなにも変わらない。

「醜い傷痕だ。こんな傷のあるぼくは気持ち悪いだろうね。すまない、こんなものをまた見せてしまって」彼はシャツから手を離し、傷痕が隠れるようにした。「だが、ぼくはただ、きみの傷なんかまったく気にならないと言いたかっただけなんだ」

 シャーロットは何度もかぶりを振った。

「いえ、いいえ! わたしだって気にならないわ。最初から、ほんの少しだって。あなたの傷は勲章と同じよ。ちっともおそろしくはないし、気持ちが悪いだなんて、そんなこと――!」彼の腕に手をかけ、下から顔を覗き込むようにして言った。

「わたしは、あなたをこわいと思ったことなんて一度もないの。本当よ。わたしがこわいのは――ジョイス……あなたに会えなくなることなの」

 彼女は手を伸ばし、シャツの隙間から見えている彼の右胸の大きな傷痕に指先でふれた。

「痛かったでしょう、ジョイス? こんなひどい傷を負って。あなたがこのけがで死ななくてよかった。あなたに会えてよかった……」シャーロットは身をかがめ、傷痕にそっと唇を寄せた。

 思いも寄らない彼女の行動に、ジョイスは目を見張って息をのんだ。

 雷に打たれたような気がした。

 次の瞬間、ジョイスは気がつくと彼女を抱き寄せ、激しく口づけていた。

 その勢いでシャツの前が大きくはだけ、彼の裸の胸と、シュミーズ一枚の彼女の胸が合わさった。薄布を隔てただけの感触がとてつもなく官能的で、気が遠くなりそうだ。

 しかし、もはやそれでは満足できなかった。肌と肌でじかにふれあいたい。

 ジョイスは、彼女の舌を自分の舌で絡め取りながら、シュミーズの肩ひもを両手でおろした。やわらかな布地が、彼女のウエストまですべりおちてわだかまる。片手で彼女の背中を抱えたとたん、なめらかでしっとりとした柔肌の感触が伝わって、下腹部に衝撃が走った。

 裸の胸と胸を押しつけると、気も遠くなりそうな快感が全身を駆け抜けた。

 なんて肌だ……!

 彼女の体が小さく震え、両方の胸の先端が小さくとがったのがわかった。

 ジョイスの手が思わずそこに伸び、丸い粒を親指の先で転がす。

「あっ……んっ……」抑えきれないような甘い声がピンク色の唇からもれて、吐息が彼の唇に当たった。その声に、ブリーチズの前がはちきれそうになる。

 ジョイスは何度も彼女の唇を食むように口づけると、彼女の左耳の下に唇を移し、三つ並んだほくろに強く押しつけて吸い上げた。

 その一点から全身に広がる心地よさに、シャーロットは熱い息を吐いて身を震わせた。

 ジョイスはさらにそこから左肩へ唇をはわせ、星のような形の傷痕にそっと口づけた。

「もう、ぼくにはここを隠さなくていい。きみのすべてが知りたいんだ」

 ジョイスはシャーロットを毛皮の敷物の上にそっと倒すと、口づけながら覆いかぶさった。彼の親指が、もう一度ピンク色の胸の先端をとらえて小さく円を描く。今度は両方に。まるでそこで火がはぜたかのように、シャーロットの体がびくんと跳ねた。

「あっ、あぁっ……!」体が熱い。頭がのぼせて、さっきまで寒さで震えていたのがうそみたい。胸の先端にふれられただけで、肌が粟立つ。胸や腰が重たくなって、じんじんする。こんな感覚は初めて……信じられない。

 彼の指や唇がふれる場所、彼の肌とふれあっている場所が、どこもかしこも敏感になってしまっている。

 ジョイスが顔を上げ、シャーロットの表情を見て取った。うるんだ彼女の紫の瞳を、深みを増した青い瞳がじっと見つめる。

 さらに視線は下がり、彼女の真っ白な胸のふくらみに行き着いた。「きれいだ……すばらしい」彼の唇が、シャーロットの胸のとがりを覆い、彼女は息をのんだ。

 ジョイスの唇と舌が悩ましい動きで、彼女を高みへと押し上げていく。胸の先端を吸われるたび、指先でころがされるたび、はちみつみたいなとろけた熱が流し込まれていくようだった。

 シャーロットは息をはずませながら、抑えきれない声を熱い息とともにとめどなくあふれさせた。いつの間にか、ジョイスの体が彼女の脚のあいだに入っていた。スカートがまくれ上がり、彼女の太ももまであらわになっている。

 すでに裸足だった足もふくらはぎも白かったが、太ももはいっそう白くてやわらかい。ジョイスは彼女の太ももの内側を、指先でそっとなぞりあげた。それだけで彼女の背がしなり、脚がわななく。

 なんという反応だろう。かわいらしくてしかたがない。

 彼はイレーヌの下穿きに手を入れ、なめらかなおなかをなでた。彼の手のほうが熱かった。もう少し下に手をずらすと、やわらかな茂みに指先がふれた。

 長い指を、とうとうその奥の中心に伸ばした。彼女がびくん、と反応する。すでにうるおいのあふれたそこは、吸いつくように彼の指を迎えた。

 小さなつぼみを、羽根でなでるようなやさしさでさすりはじめる。驚いたような、悲鳴にも似たあえぎ声が彼女の口からもれた。

 ジョイスは指を止めることなく、彼女の声に合わせて動きを速めていった。彼女の甘い声を聞いていると、脳が焼けつきそうだ。

 シャーロットは自分の体の変化についていけなかった。まるで体の芯に火がついて、どんどん炎が広がっているかのような気がする。腰が揺らめくのを止められない。おなかのなかがうねっているような、うずいているような……ああ、どうすればいいの?

「ジョイス……ジョイス……」うわごとのように彼の名を口にした。なにをしてほしいかもよくわからないのに、哀願せずにはいられなかった。

 ジョイスはブリーチズの前を手早く探り、ボタンをはずした。すでに硬くそそり立っているものが、布地のなかではちきれそうだ。

 彼女の下穿きを引き下ろして、片方の脚を抜く。その脚を広げるようにして、彼は腰を強く彼女に押しつけた。その硬さと熱さと大きさに、彼女が驚いたように目を見開く。

 いったん腰を引いたジョイスは、ゆっくりと先端を彼女の秘めやかな場所に押し当てた。激情のままに貪りたい衝動をこらえ、少しずつ力をこめる。

 しかし次の瞬間、押し返されるような感覚が確かに伝わった。

 とっさに腰を引いて、もう一度前に進めたが、彼の腕をつかんでいた彼女の指が皮膚に食い込んだ。信じられない思いで彼女の顔を見る。

「イレーヌ……きみは、まさか……」

 額に汗を浮かべた彼女が、ぎゅっとつぶっていた目を開けた。

 しかしなにも言わず、彼の首にひしと抱きついた。「ジョイス……お願い……やめないで」

 一瞬、ジョイスは逡巡したが、踏みとどまるだけの冷静さは彼にも残っていなかった。

 彼女に深く口づけ、力強く腰を突き上げた。

 シャーロットの唇から飛び出した悲鳴は、ジョイスの唇に吸い込まれた。

 体を開かれ、自分のなかを満たされた初めての感覚。不思議とこわくはなかった。こわいどころか、彼のあたたかい腕と胸のなかは安心できて、すべてをゆだねたくなるような心地だった。

 彼が熱い息を吐き、ゆっくりと動き始めた。

 シャーロットは必死でしがみつき、彼の背中に指を立てた。

 胸と胸がこすれあって、彼と自分の体温が同じになっていくのがわかる。

 熱くて、熱くて、とろけてしまいそう。

 なにかに向かってどんどん追い立てられていく。

 ああ、もう……そう思ったとき、シャーロットは高い声を上げてわなないていた。

 その声にジョイスも限界を迎え、熱いものをほとばしらせた。

 それからしばらくの間、小屋のなかには、ふたりの乱れた息づかいだけが聞こえていた。

 ときおり口づけを交わしながら見つめ合い、けだるさと充足感に身を浸す。

「どうして言わなかった……?」少し落ち着いたころ、ジョイスがかすれた声で言った。「わかっていれば、もっと違ったふうに……」彼はイレーヌの頬に手を当てて、目を合わせた。うるんでぼんやりしたような瞳がいとおしい。

 シャーロットは小さく首を振ってゆっくりとまばたきし、やさしい瞳で彼を見つめ返した。

「いいの、これでよかったの……」そう言って彼の胸にすり寄る。

 そんな彼女を、ジョイスは大切なものを包み込むようにそっと抱き込んだ。

 やがてふたりは抱き合ったまま、つかの間の浅い眠りに落ちていった。

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