エピローグ
やがて、あけぼの市は悪い意味でにぎやかになった。
オークの群れの襲撃に、
誰が、どこから漏らしたかは解らないが、そんな異常事態を、意地汚いマスコミが見逃すハズがなかった。
「そちらのロボットが暴れたと聞きましたが?!」
「だからデカイ方は知らんと言っとるだろーが!」
「保管していたそちらのロボットはどうなったんですか!?」
「何度も言っとるだろ!俺が乗って戦って壊したんだよ!」
キンノスケも、町の家電修理の仕事の帰りに、待ち受けていたマスコミ軍団に捕まってしまった。
知名度が上がれば仕事も増えるが、何事にも限度がある。
それにここまで騒がれては、仕事の妨害になるレベルだ。
「とにかく話す事は全部話したからな!それじゃ!!」
「ああっ!何か一言!何か一言!!」
鬱陶しそうにマスコミを巻き、キンノスケは逃げるようにゴールド重工の社屋に入る。
外では未だに、マスコミがぎゃあぎゃあと騒いでいた。
「ったく、仕事やりずれぇっての………」
「あ、お帰りなさい社長」
「おう、帰ったぜ」
かなり疲れた様子のキンノスケに、麦茶を入れて出迎えるジロー。
冷蔵庫の修理でここまで疲れた事になるとは、キンノスケも思わなかっただろう。
気を紛らわそうと、テレビをつけるキンノスケ。
だが。
「まーたこのニュースかよぉ………」
今はどこをつけても、あけぼの市で起きた戦いのニュースで持ちきりだ。
VTRとして流される、逃げなかった市民が撮影したニクスバーンとロックキングの映像を見るのは、これで十回目だ。
折角気を紛らわそうとしたのに、これでは思い出してしまう。
しょうがない、kuluでアニメでも見るかと、キンノスケがリモコンに手を伸ばした、その時。
「………社長」
「あんだよ?」
ふとジローが、キンノスケに話しかけた。
どこか不安そうな、神妙な面持ちだ。
ジローがこういう顔をする時は、決まって何か強い不安がある時だ。
「オークが地上に出てきたのは、あのロックキングから逃げてきたから………」
「多分な、つーかそれお前が言った仮説じゃねえか」
本格的な調査がまだな以上、それも仮説でしかない。
けれども現状、オークの群れはロックキングから逃げて地上に出てきたというのが、この事件に関わった一同の共通認識だ。
「それじゃあ………ロックキングは何で地上に現れたんです?」
そして浮かぶ疑問は、それだ。
ロックキングを初めとするドラゴンは、地下の深い深い所で眠っている。
人為的に叩き起こさない限りは、目を覚まして地上に出てくるなんて事はない。
では、何故ロックキングは地上に現れたのか?
ロックキング側には、エサも少なく慣れない環境である地上に出てくるメリットなど、何もないというのに。
「………まさか」
ふと、キンノスケの頭に新しい仮説が生まれた。
だがそれは、下手をすればこの地上を揺るがすような事になる。
………それが、正しければの話だが。
「ロックキングより………ドラゴンより強い「何か」が、日本の地下にいるのか………?」
昼下がりのゴールド重工のオフィスは、しんと静まり帰り、
真夏だというのに、キンノスケやジロー、そして社員達の背中に、言い知れぬ悪寒が走った。
ちりん、と、風鈴が鳴る。
静かな音色は、これか先の未来に起こる事を予見するような、嵐の前の静けさを感じさせていた。
我等、はみだしテイカーズ
第二部 完
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