第4話 水の魔女



メレメ・ジュン・レデバン ♀

 15歳 魔族(魔女) 魔女レベル1

体力:504/505 魔力:1373/1380

加護:ーーー

能力:魔眼(鑑定、威圧、魅了、透視、暗視、遠視)、魔法創造、錬金術、

魔法:

 水魔法:ーーー

 雷魔法:ーーー


 ええと、私は火魔法の適性が、ないらしいですね。

 水と雷? 

 雷魔法なんて聞いた事もありません。

 そんな属性があることすら知りませんでした。

 もちろん、前世では電気に囲まれた生活をしていたので、雷が電気によってもたらされるのは理解しています。

 "魔法はイメージ、術式は後から勝手についてくる" そう魔女が誇らしげに言っていたのを、思い出しました。

 一度だけ理由を聞いたことがあります。

 "それは理屈ではない、魔女は感覚で魔力を練るからだ" と、余計に混乱させる様なことを言われて戸惑ったのを、覚えています。

 きっと〈魔法創造〉によるものなのかと今なら想像がつきますが。

 とんでもないスキルですね。

 けれど、自分に適性がある以上、それを無視するのは賢いやり方ではありません。

 水と雷。

 ふと、自分が電気ウナギにでもなったような気分になります。

 あながち間違えでもない気もしますが、当然、却下。

 それはどうやっても、可愛くならないから。

 やはり、15歳で可愛いさを追求するのは誰にも止められない自然の摂理と言うものです。

 その点、水魔法ならその素質が十分。

 ハート型の水滴なんて安直な発想は子供騙しでしかないと、予め言っておきます。

 私は家の中にとって返し、幾つがあるストックの中から、水魔法に適したものを選び出しました。

 魔女の魔法は基本的にえげつないものが多い。

 あの魔女は火の適性だったのでしょう、燃やしたり爆発させるのが得意のようでした。

 私はそんなことはしない。

 爆発より収束を、燃やすより、……何だろう?

 水なら、頭を覆うだけで溺死させることも出来ますね。それなら火で人を炙り殺すより遥かに静かでスマートな気がしました。

 火魔法の "炎の鞭" を水魔法では、水の鞭が塊に分かれて飛び散る "死のテープ" にしようと思ってみたり。

 薪割り用の短くっ切った丸太を幾つか転がして庭に置きました。

 頭の中でイメージを何度も繰り返して固めます。

 

「水よ 」


 少しだけ右手を前へ持ち上げました。

 軽く握る感触が既にあります。

 手からホースのように、細長い水のテープが伸びていました。

 

ーーー死のテープ


 頭の中でそれだけ唱えました。

 手も鞭を振るような動きをします。

 すると、水のテープはしなるような動きをして、先端から切り離れ塊となって、置いてある切り株に取り付いていきました。

 人や魔物、生きて呼吸する者ならこれだけで命を奪えるでしょうね。

 稀に魔力を持った者は抵抗するらしいと聞きます。

 その為にも2の矢、3の矢を用意しておかないと容易に立場は逆転するでしょう。

 "魔女は命の遣り取りなんて野蛮な事には手を染めないが、相手が寄って来ちまったら、そんな話は誰も聞きゃしないんだからね、 やるなら躊躇わず徹底的におやりそれが魔女のやり方なんだ" と、なんで私に言い聞かせていたのか、今になると分かります。

 私も魔女だから。

 魔力はある。

 使い方をもっと知るべき。

 水と雷、私は2つの魔法を武器にこの世界で生きて行かなくてはなりません。

 魔女への復讐は、雷の一発も落としてやれたらいいか、あちらは魔女の大先輩だし。簡単にはやらせてくれないてしょうね。

 魔法をもっと練習して、もっと上手くなって、もっと、洗練させて、いつか文句の1つも言ってやるんです。

 それだけを胸に、私は魔法の練習に打ち込みました。



◇◇◇◇◇



 隣国アフタリアでは、大賢者マテリエーヌの出現に国を挙げて湧いていた。

 長らく隣国のクレルリッツ王国にいたはずが、ふらりと姿を現した。

 大賢者と言えば一国の騎士団を全て合わせても勝てぬと言われるほど殊更、貴重な戦力だ。

 自国の味方につけようと画策するのは当然と言えた。

 しかし、大賢者の表情は冴えない。

 当たり前と言えば当たり前だ。

 それだけの事をしてきたのだから。

 良心が咎めないと言えば嘘になる。

 しかし、魔女は魔女なりの生き方がある。

 独立すれば、娘と言えども敵となる。

 寿命の長い種族は繁殖力が極端に弱かった。

 個の力が強力であるが故に集う事を何よりも嫌う。

 

ーーー何処へ行こうかしらね…… 


 大賢者マテリエーヌは忽然と姿を消し、その行方を知る者すら、ようとして現れなかった。


 

◇◇◇◇◇◇◇◇ 

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